生理5日目、香織が目を覚ますと沙織はベットの中でモジモジしていた。

「どうしたの?」
「うん? あ、おはよう」
「うん、おはよう。どうしたの?」
「え? あ、いや……終わったかな?と思って」

 香織はのっそりとベットが起き上がって無造作にパジャマのズボンを下ろした。沙織も起き上がって下を全部足元まで下ろしてしまった。

「止まってるね」
「そうだね」

 二人の生理リズムがシンクロしている事に初めて香織は気が付いた。ただ、この二人だけではなく他の部屋の女の子もシンクロしている事に気が付いて理解し た。

 管理する側には、彼女たちの体の変化がシンクロしている方が楽なんだろうな……
 だって私達は道具だから。

 もはやそんな事を考えても落胆や消沈する事はなくなっていた。自らの運命を受け入れた潔いまでの覚悟。
 この時点で既に『出荷準備完了』なのだった。

 朝食を済ませた二人が部屋に帰ってきたら雅美が部屋の中に立っていた。二人とも瞬時に極限の緊張状態となる。

 クローゼットは……綺麗にしたよね。キッチンもさっき綺麗に拭いて蛇口も片方に寄せたよね。
 ベットは二人でシーツを掛けなおして毛布を綺麗にたたんで枕もカバーを掛けなおして揃えて……何が悪かったんだろう?
 カーテンも綺麗に揃えたし、引き出しの中は昨日の夜きれいにしてから使ってないし、椅子はキチンとテーブルの下に入れたし……

 瞳孔が全開になるような緊張感の中で沙織が先に口を開いた。

「雅美姉さま……どこか……至らないところが……あります……か……」

 最後のほうは消えそうな声だった。

 雅美は無表情のまま部屋を見回してから一瞬間をとって口を開いた。

「これで良し!は永遠にありません。良しと思った所から次の目標が生まれます」

 二人は何を使用止めにされるのか、怯え切っていた。しかし、次の雅美の一言は意外なものだった。

「私の予想以上に綺麗になっているのでビックリしていました。十分合格ね」

 そういってやっと雅美は笑った。二人の表情から安堵の色がもれる。それを見て雅美は続ける。

「ただ、ナプキンを使ったら補充しておきなさい。次に必要な時に困るでしょ」

 沙織はペロッと舌を出してしまった!の表情を浮かべる、香織はホッとした表情になる、
それを見て雅美は笑う。

「いつも綺麗にしていないとダメよ。部屋も、人間もね」

 雅美の巡検が隣の部屋に行ったのを見届けて二人はベットに腰を下ろした。

「ビックリしたね〜」
「うん、今日はダメかとおもった」
「沙織はホントに心配性ね」

 屈託の無い会話が続く。雅美が部屋にいたのは見回りだけが目的ではなかった事を二人は知らなかった。

「今日は一日暇だし……お風呂行こうか?」

 二人が部屋を出ていったあと再び雅美が一人部屋に入る。
 えぇっと……あったあった……このマイク壊れてるのよね。

 雅美が部屋に居た理由は監視用機材の調整なのだった。

 ほとんど人の居ない風呂場でゆっくりと湯に浸かり部屋へと帰ってきた二人。生理が終わってエチケットルームとよばれる専用風呂場へ行かなくてもよくなっ た。
 風呂上りの火照った体からは彼女達にとって危険な成分を含んだ汗が噴き出している。互いの体に鼻をつけてクンクン匂いを嗅ぎ合う。
 部屋の明かりを落として互いの体を弄り合いはじめる……お互いに心の隙間を埋めるかのような戯れが狭いベットの中で行われていた。

 24号棟一番奥にある棟長の部屋で、雅美は高感度カメラの映像を見ながら音声を聞いていた。甘く激しい吐息と淫らな声が漏れ聞こえてくる。
 モニター越しに二人を見ながらファイルに何かを書き始める雅美。ペンをテーブルに置きモニターを食い入るように見つめている。
 沙織の指と舌が香織の繊細な蜜壷の中を行ったり来たりしている。香織の背中が弓のようにしなり、そして股間に位置する沙織の頭を大切そうに抱えている。
 真っ白な光に包まれる快感を求め香織は腰を動かして沙織に甘える。その姿を見ながら雅美はつぶやく。
「男達もあなたの腰使いは喜ぶでしょうね……フフフ」

 香織の体から力が抜けて糸の切れた人形のようにベットへうずくまった。沙織は香織の顔をそっと抱きしめて自分の胸へと運ぶ・
香織は絶頂まで自分を運んでくれた沙織の胸をもみながら乳首を舐め始めた。

「あらあら、香織ちゃんはテクニシャンね……」
 雅美は少しずつ自分の息が荒くなっている事に気が付いた。
「あら、ダメだって今日は……コーヒー淹れてこなきゃ」

 モニターの向こうで二人の少女が再び優しく激しく絶頂を目指し始めたとき、雅美は濃い目のコーヒーを飲みながら呟いていた。

「早く沙織を出荷したいな……もぉ……主任の意地悪……」

 事務テーブルの上に載る一枚の紙切れ。TS法によるリロケーション部門から送られてきたメールを出力した指示書だった。

 『母体配置計画に関する計画変更通知 第4322号の補足22-4』

 新規コンセプトで新設される全寮制学校への母体配置計画が事細かに指示されていた。
 きわめて仲の良いルームパートナーを選出し送り込む事、観察力と洞察力に優れ安定性の高い母体とする事。それ以外の母体のうち、安定性の高い母体を集中 配置する事。

 人口増加プログラムに組み込まれたもう一つの目的、天才創造計画が動き出したのだった。雅美は忌々しげにその指示書を睨んでいた。

 沙織と香織を一緒に……いじり倒してみたかったなぁ

 力尽きて眠りに落ちた少女二人は自分達が雅美に狙われている事を知る筈も無かった。


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