やはり見過ごすわけにはいかない。
問題は一つ一つ解決していこう。
私はさざえ鬼に会うため、出現ポイントである岩場へと向かった。
「さざえ鬼・つぼ焼きはご勘弁」
ごつごつとした岩が立ち並ぶ漁村から離れた岩場。
夜に目撃例が集中するため、日が暮れるの待ってから私はここへやって来た。
周囲に気をめぐらせて妖気を探す。
・・・まだ現れていないようだ
いないものは仕方がないので、私は適当な岩に腰掛けて待つことにした。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
こうしてみると夜の海も良いものだ。
ただ静かに、波の音が響くだけ。
目を閉じて音のみを楽しもうー
そんな時、
コン・・コロコロコロ
波の音ではない、何か堅い物が転がる音が耳に入った。
「・・・?」
目を開けて音の正体を確かめるため、足元に転がっているそれを持ち上げた。
(空のさざえ・・・?・・さざえ・・・・・しまった!)
私はここに何をしに来たのかをすっかり忘れていた。
夜の海を楽しみに来たのではない、私はさざえ鬼を探しにきたのだ。
これが凶悪な妖怪だったら、私はすでに殺されていただろう。
目を覚ますために冷水でも頭から被りたい気持ちだったが、ここで下手に動いて相手を刺激するわけにはいかない。
腰掛けたまま妖気を探る。
・・・・・・・・・・・・・見つけた
右手に見える一際大きな岩。その反対側に妖気を感じる。
私はゆっくりと立ち上がると懐から不動の術札を取り出し、相手が動くのを待った。
それから約二十秒後、妖気がゆっくりと動き出した。
私もそれに合わせてタイミングを見計らう。
そして岩の向こう側からさざえが飛んできた。
同時に私も札を向こうへと投げる。
さざえをかわし、両手をあわせて呪文を唱えた。
バシン!バチバチ!
「ギャウ!?」
術が発動した音と共に奇妙な叫びが聞こえた。
私は声の主に会うため反対側へとまわった。
そして目の前で動けなくなっているモノを見る。
それは大きなさざえの殻らしき部分から手のような物が生えていて、
殻の両側に触覚のような目があり、体はアメフラシをスマートにしたような奇妙なモノだった。
新種のUMA発見か、とも一瞬思ったがやはり違う。
きちんと妖気を発した妖怪である。
「えー・・・あなたがさざえ鬼ですか?」
ためしに話しかけてみる。
「ギュー! ギョゲー!」
「漁村の人々にさざえを投げつけるのをやめていただきたいのですが・・」
「ギョゲギョッギョー!?」
「それさえ止めていただければ私は立ち去りますので・・」
「ギョ〜〜〜〜〜!」
駄目だ。
会話になっていない。
さざえ鬼の言っている事が分からないが、相手もこっちの言っている事が分かっていないかもしれない。
「・・・仕方ないですね」
両手で印を結び頭の中で呪を唱える。
さざえ鬼は嫌な予感を感じ取ったのか、一層大声を出している。
だが構わず印をさざえ鬼に向け、呪を発動した。
「・・・喝!」
「ギョ・・・ギョゲーーーーーーー!?」
さざえ鬼が眩い光に包まれた途端、爆発した。
もうもうと煙が辺りに立ち込める。
私は手を下ろして爆発の中心を見た。
すると──