そのときまでは男の子だった。しかし、今は女の子だ。
それはもう突然で、そのときの記憶が途切れ途切れになっている。



授業中だったのは…覚えている。
算数の時間だった。
給食のあとの5時間目。周りのやつらはストーブの暖かさに居眠りをするばかり。
きっちり勉強しているのは、ガリ勉とガリ子くらいだった。

オレも例外に漏れず、うつらうつらと、担任の授業を眺めていた。
しかし、異変はそこから始まったと言ってもいい。
そしてそこから記憶が途切れ始める。

断片化された写真のスライドショーを見るように・・・
・・・目の前に迫る床。
・・・心配そうに覗く級友。
・・・突如パニックになる級友達。
・・・目の前が黒いモノに覆われる。
・・・それが自分の髪だと気がつく。スポーツ刈りだったのにおかしいと思った。
・・・全身に力が入らない。体が熱い。
・・・何か車内に寝かされている。救急車と気がついたのは、サイレンが聞こえてからだった。

記憶がはっきりとしたのは、病室で気がついたときからだ。

体を起こす。まだだるさが残ってるので、ゆっくりと半身を起こした。
そのときの不思議な感覚は、今でも覚えている。
胸のあたりが重いのだ。頭も。
なにか包帯でも巻かれているのかと、胸を確かめる。
「ふにゅん」とした感触、胸のあたりを掴まれてる感覚があった。
一瞬、あっけに取られた。
「うそだ、夢だ」と首を振ってみた。
さらさら・・・と黒いモノが視界を覆う。
自分の髪だと気がついた。

・・・・・数秒後、病室で絶叫していた。

なぜかは判らない。
突然に女体化してしまうなんて、今までの事例にないのか、半年ほど、病院に厄介になることになる。
治療費はどこからか出るとのことで、親は安堵していた。

しかし、行政の手続き、学校への説明は困難を極めたらしい。
ぜんぜん判らなかったけど。
一応、病院の診断結果が確定し、決着がついた。
結果は、完全な女性だということらしい。
この年齢に対しておかしいくらい、体は成長しているようだ。
と、診断書に一文が付与されていた。

学校は、今までのところへは通学できないらしい。
級友達への影響が大きすぎると、学校・PTAからの転校要請があったのだ。
マスコミには一切公表されなかったのと、級友達にも説明されなかった為、
死んだということにして、別の名前が与えられ、隣町に引越し、別の学校に通うことになった。

このときの以前通っていた塾を変えなかったという失敗が、あとあとの事件を起こしてしまう。


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