意識が朦朧としていた。それに体が熱い。全力で走った後のように・・・
そうだ、俺は確か、真希に・・・そうだ、真希は?
なんとか目を開けると、目の前には・・・真希がいた。
その真希は、妖しげな笑みを浮かべて見下ろしている。
体を起こそうとした。そこで、裕紀は一つの異変に気づいた。
か、体が動かない・・・?
いくら力を入れても、指一本ぴくりとも動かない。
ま、真希・・・
しゃべろうとしたが、口も動かない。
「さあ、立ちなさい」
その真希の一言に呼応するかのように、自身の意思ではどうにもならなかった裕紀の体が、言葉どおりの行動を起こした。
これはいったい、どうなっているんだ?真希?
なぜ体が動かないんだ?
混乱する裕紀に、真希が語りかけてきた。
「裕紀・・・いや、裕美、どう? 私の僕として生まれ変わった気分は?」
次の瞬間自分の口から出てきた言葉に、裕紀は凍りついた。
「ああ・・・真希様、私は・・・このような美しい体まで頂き、真希様の僕にしていただいて、本当に幸せな女でございます」
うっとりとした表情で隷属の言葉を述べ、真希のもとにひざまづく。
なんだって?口が、勝手に・・・!
俺が・・・僕?しかも、「真希様」だって?
声を上げようとするが、体は言うことを聞かない。
満足げに微笑んだ真希が、俺の顔を上げさせた。
至近距離で向かい合う格好になる。
「よく言えたわね。ごほうびにその体をしっかり味わいなさい」
「ああっ・・・ありがとうございます、真希様」
ま、また体が勝手に・・・!
頼む、何とかしてくれ・・・俺を自由にしてくれ・・・
自らの胸に手を伸ばす。
誰に邪魔されることもなく、豊かな胸を何の躊躇いもなくもみしだく。
かつてよりも白く繊細な指先が、敏感に乳房の質感を伝えてくる。
視線を落とし、ただ蹂躙されるがままのかつての面影などまったくない自分の大きく膨らんだ乳房を見つめる。
まるでその行為を自分自身に見せつけるかのように。
視線が、いやでもそこに釘付けになる。
いくら視線をそらせようと頑張っても、それは無駄な努力だった。
先ほどまでの行為で充分に張っていた。
それに加えて、自らの胸を揉まれている感触、手に力を加えるたびに口から漏れる自分の可愛らしい声が、
裕紀自身の興奮を高めていたこともあったせいかもしれない。
意思とは無関係に強まっていく興奮に、胸を揉む力がさらに強くなっていく。
それとともに、発情した女の声が惜しげもなく裕紀自身の口から吐き出される。
「んっ・・・はんっ・・・ああっ・・・」
「あらあら・・・いい声出しちゃって。そんなに女の子の体が気に入ったのかしら?」
「ああっ・・・んぅっ・・・真希様・・・」
裕美に操られた裕紀の指先は、ただ快楽を求めて一心不乱に動きつづける。
「そろそろここもさわってみたいんじゃないの?」
いたずらっぽく微笑んだ真希は、胸に当てられていた片手を裕紀の股間の茂みへと引っ張る。
添えた手で裕紀の細い指を二本伸ばし、濡れた一気に秘部に突き刺す。
「あはああっっ!!」
電撃的に走る快感に、全身は痙攣し、裕紀の思考はストップする。
それでも裕紀の両手は動きを止めない。
いや、止めることができない。
執拗に快楽を追い求め、胸の突起を、秘部の突起を指で刺激する。
自分ではどうすることもできず、ただ延々と与えられる女としての快感。
それなのにその快感を与えているのはほかならぬ自分自身という倒錯感。
それに自らの口から発せられる女の声。
快感に必死に耐える小さな喘ぎではなく、裕紀の興奮を煽るかのように可愛らしくも大きな声を上げる。
それが裕紀の男としての心の興奮を加速させ、それが女体の発情となって現れる。
裕紀は、もはや何も考えられなくなっていた。
ただ自らの行為に、そして快楽に身を任せるだけだった。
それを見計らったかのように、裕美は秘部と胸への刺激を一段と強めた。
「ああああっっっっっ!!」
全身が大きく痙攣し、その場に崩れ落ちる。
「ふふっ・・・いっちゃったみたいね」
裕美をそっと後ろからやさしく抱きしめる。
「でもね・・・まだまだこんなものじゃないわ。それに・・・裕紀には心の底から『裕美』になってもらわないとね」
うつろな表情の裕美の目をじっとのぞきこむ。
(裕紀・・・裕紀!)
ぼんやりとした様子で、裕紀が目を覚ます。
「ま、真希・・・」
なぜだかわからないが、口が思い通りに動く。
「女の子ってすばらしいでしょ?これで私の僕として協力する気になったんじゃない?」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「さあ、言ってごらんなさい。あなたは誰?」
裕紀は頬を上気させた虚ろな表情で、しかしこう答えた。
「お・・・俺、は・・・」
最後まで聞かずに、真希の目がつりあがった。そして、目の奥に光が差した。
「ふふ・・・どうやら甘く見てたみたいね。いいわ、徹底的に教えてあげる」
いきなり両手両足を後ろから押さえつけると、足を絡まる。
そのまま両足を開かせ、乳房と秘部を同時に刺激する。
愛撫などという生易しいものではなく、荒々しい蹂躙。
次々と押し寄せる絶頂の波に耐え切れず、絶叫に近い喘ぎ声を上げ続ける。
休みなく刺激を与えつづけながら、耳元でそっとささやき続ける。
(わかるでしょう?あなたは裕美なの)
「うあっ!・・・あっ・・・あっ・・・そんな・・・い・・・いやっ・・・」
(あなたは私のもの。あなたにとって私の命令は絶対)
「あ、あ、あ、あ、あ、や、やあっ・・・」
ひとつひとつの言葉が、快感に乗せられて裕紀の脳髄にまで染み込んでいく。
裕紀の中にわずかに残っていた自我が崩れ去っていく。
(さあ、いらっしゃい・・・)
「んんっ・・・ううっ・・・もう・・・ああっ・・・うあああああっ!」
何度目かわからない絶頂を迎えさせられ、裕紀の意識は闇の奥深くへと消えていった。
「あ・・・あは・・・あははははは・・・」
後に残ったのは、女を絶頂に追いやった憑かれた女の狂った笑い声だけだった。