写真の中で絡み合う2人の美少女・・・・1人は琴美ちゃん・・・もう1人は・・・僕だ。
全身の毛穴が開くような感覚が僕を襲い汗が額を流れ落ちた。肩も小刻みに震えているのが自分でも判る。
クラスメイトの気配を感じ慌てて写真をポケットに突っ込む。
「おはよう、真実、今日もかわいいねぇ」
「お・・・・おう」
クラスメイトの冷やかし混じりの挨拶にも力なく答えるのがやっとだった。
そのままとぼとぼと廊下を歩き教室に着くと時間は既に始業時間間近だった。
教室ではクラスメート達が思い思いの場所で雑談に華を咲かせていた。
しかし僕の心はそんな楽しげな教室の空気とは裏腹に深い闇の底に沈んでいた。
皆に見られないようにそっとポケットからくしゃくしゃになった写真を取り出す。その写真の裏側には予想したとおりの短い文章が書かれていた。
12:30 体育館裏へ来い、さもなくば・・・
この短い文章は僕の選択肢を縛るのに十分なものだった。行かなければどうなるかは火を見るより明らかだ。
(行かなきゃ・・・・駄目だよな・・・・)
行けば何かを要求されるだろう・・・だがこのまま知らぬふりをするほど僕の心は強くなかった。
先生が教室に入りHR,続いて1限目の授業が始まったが僕の心は深く沈んだまま授業の内容はまったく耳に入らなかった。
時間が経つたびに底なし沼にはまり込んだようにずぶずぶと恐怖に捕らえられていった。
・・・怖い・・・・嫌だ・・・・行きたくない・・・・・・・・・・でも
恐怖で肩が震えシャープペンを持つことすらままならない。
一体誰がこんな事を・・・・真っ先に顔が浮かんだのは西沢だった。しかし心の片隅で違うと叫ぶもう1人の自分が居た。
まったくの勘だが西沢ではないような気がする。あの時、居酒屋で逢った奴になぜか以前のような陰湿さが感じられなかった。
それに・・・奴の態度はからはこんな事するようには思えなかった。
では一体誰が・・・・・
思考は螺旋を描き時間だけが流れてゆき結論が出ないまま運命の昼休みを迎えた。
体育館裏へと向かう道のりがいつまでも続けば良いのに・・・・だがそんなことは有るはずも無く目的の場所は確実に近づいてきた。
昼の暖かい日の光が射す中庭を抜けると体育館の裏についた。
裏山と体育館に光が遮られたこの場所は、どこか陰湿な空気が漂いこれから起こることを暗示しているようで、僕の心はより深く沈んでいった。
「あっ・・・先輩・・・・」
陰湿な空気のその場所に1人の少女が立ち尽くしていた。その瞳にはいっぱいの涙が溢れ僕の姿を見るなり僕の胸に飛び込んできた。
「・・・・なさい・・・・ごめん・・・・・なさい・・・・ごめんなさい・・・」
肩を震わして泣きじゃくる琴美ちゃん、おそらく僕と同様に呼び出されたのだろう。
その姿に初めて逢った時の様な強引さは無く今にも消えそうな存在のように思えた。
(僕は男だろ、こういう時こそしっかりしなくちゃ・・・)
「大丈夫・・・・大丈夫だから・・・」
琴美ちゃんの肩を抱き少しでも不安を鎮めようとした。
無論僕自身の肩も震えていたが抱き合うことで少しでも不安が拭えたらと思いより強くその震える肩を抱きしめた。
不意に背後で気配がした。
「よう!お嬢様方お待たせ」
「てめえ・・・高尾・・・立川・・・・こんな事・・・・お前らか?・・・・」
目の前に立つ二人の男に対し綺麗なアルトの声に似合わない言葉で凄んでみせるが二人の男は意に介さず不敵な笑みを浮かべていた。
「そうだぜぇ、いい物を見せてもらったよ真実ちゃん。そっちの彼女も・・・。今度は俺たちも混ぜてくれよ」
高尾がそう言うと琴美ちゃんには立川が、そして僕には高尾がにじり寄ってきた。
もともと高まっていた恐怖が爆発的な勢いで増してきた。思わず後ずさりするが高尾は僕の腕を捕まえそのまま後ろから抱き寄せた。
ハァハァとした高尾の荒い息がうなじに掛かり気持ち悪い。
「逃げたらどうなるか判るか真実ちゃん。・・・俺の意思ひとつであの写真はネットに広がることになる。
もちろん修整は無しだ。それでもよければ逃げてもいいぜ」
「っく・・・・・」
その言葉によって僕は抵抗という選択肢を失い、ただ高尾にされるがままになった。
高尾の手がワイシャツの上から決して大きいとはいえない胸をまさぐる。
「ん・・・んふぅ・・・・ん・・・」
声を押し殺そうとするが胸から伝わる甘い刺激がそれを許さなかった。
「はっははは・・・真実ちゃんいい声出してくれるねぇ嬉しいよ・・・・だけど本番はこれからだ」
高尾がワイシャツを力任せに引き千切るとブチッブチッとボタンが弾け飛びブラに包まれた小振りな乳房が高尾の前に晒された。
「ぷっ・・・お前・・・ブラジャーなんか着けてるのかよ、男の子なんだからこんなもの・・・外せよ!」
そう言うと高尾はブラをも力任せに引き千切り露になった乳首にむしゃぶりついた。
「ああ・・んん・・・んふぅ・・・やだ・・・やめろ・・とめろぉぉぉぉ・・・」
チュパチュパと音を立てて乳首を吸われるたびに口からは濡れた声が溢れ出した。
(男なのに・・・)
身体を玩具にされてこんな声を出す自分が情けなかった。
「ほぅら真実ちゃん、乳首・・・こんなになっているよ・・・いやらしいねぇ」
「いや・・・ちが・・う・・・はぁあ!・・ああっ・・・ああああ」
「どこが違うんだ?こんな声だして・・・・どれ・・・こっちはどうかな」
乳房を捏ね回していた高尾の右手が僕の学生服のベルトに延びてきた。
(・・・犯される・・・・)
身体の本能が警告を発し必死で抵抗するが、体格で勝る高尾に抵抗できる訳も無くあっけなくズボンは引き摺り下ろされ、
僕は裸にワイシャツだけの姿にされた。
「いや・・・・いや・・・いやあああああああああああぁぁぁぁあぁ」
その頃、1人の男が走っていた。森の中をただひたすら前へ前へと。
「くそっ!俺がもっと早く自分に素直になっていたなら・・・・頼む、間に合ってくれ・・・真実・・・・今行く」
男は真実の名を叫びただひたすら前へと・・・真実の下へと急いだ。
男の名は・・・・・・・・西沢 亮。
時間は30分ほど遡る。
西沢は決意を胸に真実がいつも居る場所・・・稲荷神社に来ていた。だがそこに真実の姿は無く境内は静まり返っていた。
「あいつまだ来てないのか」
西沢は境内のベンチに腰を下ろし真実を待つことにした。しかし5分経ち、10分経っても真実が現れることは無かった。
「今日はもう戻るか」
西沢が腰を上げようとしたその時、その声は聞こえてきた。
「ニシザワリョウ・・・マッテクレ」
「誰だ?」
振り向いたが声の主らしき人影はどこにも無かった。
「ココダ・・・アナタノマエダ」
すると西沢に前に銀色に輝く1匹の狐が社の中から現れた。その姿は神々しく正に神というほかに無かった。
「なっ・・・・・狐?」
「そうだ、私はここに祀られている狐だ。・・・ん? この姿では話し難いか、ではちょっと待て」
狐は光に包まれやがてその姿は銀髪が美しい青年に変わった。
「これで良いだろう?では話の続きだ」
「ちょっと待て、その狐が俺に何の用があるんだ」
西沢は驚きを隠せなかったが狐はそのまま話し続けた。
「西沢よ時間が無い、いま真実が男たちに襲われている」
先ほどの衝撃以上の衝撃が西沢を襲う、卒倒しそうになるのを堪え西沢は狐の話を聞き続けた。
「そこで頼みがある、真実を助けてやって欲しい。このままではあの子の未来すら潰れてしまう」
「そんなのあんたがやればいいだろ、何で俺に頼む? それに真実の姿を変えたのもあんただろ。あんなことが出来るのは神様か悪魔ぐらいだ」
西沢の非難にも狐は動じず淡々と語り続けた。
「確かにあれをやったのは私だ、そして今真実を助けるのは簡単だがそれでは問題の解決にはならない」
「それは・・・なぜです? 理由を教えてください!」
「私にはある程度未来を見る力がある。そこで見た不幸な未来を変えるために多少の不確定要素があったがあの子を女に変えた。そしてその不確定要素はあな
たの事だ」
「そんな・・・なんで俺なんだ・・・」
「ふふ・・・自分の気持ちに素直になりなよ・・・さあ、もう時間が無い真実たちはこの森を降りたところに居る。・・・頑張れ」
狐の言葉は不思議なほど温かくまた重かった。西沢の足は既に林道へと駆け出しそれを見送る狐の目は優しげだった。