もとから料理は得意なほうだった。
あまり裕福とは言えない冷蔵庫の中身を使って、食事を作るのはそんなに苦じゃなかった。自分の格好を除いて。
――はぁ・・・なんだってオレがメイド服で料理しなきゃならんのだ・・・。
改めて自分の格好を思い浮かべると、恥ずかしさがこみ上げてきた。
股がスースーする。そりゃスカートだもんなぁ。
胸がずっしりと重い。結構大きそうだし。
股間がぴったりと覆われているのも変だ。ちなみにご主人様に隠れて見てみた。
青と白のしまパンを履いてた。
――ベタだなぁ・・・。や、これ設定したのオレなんだけど。
少し身動きするたびにひらひらするスカートも慣れない。
頭を動かすたびに、例のベルがちりちりと鳴る。
さっき髪ごと切ってベルを取ろうとしたら、キッチンに入ってきたご主人様が
「設定、鈴は自分でベルを外せない」
―――ちりん
『補足設定・自分でベルを外せない・実装』
「ぁ、・・・あぅー・・・」
右手でベルをつまみ唸るしかなかった。
「ほら、できましたよ。ご主人様」
「オムライスか、いいねぇ〜。ケチャップとかで絵を描いたり? あぁ、悪かったよ。睨むなよ。拳を構えるな」
オレ特製オムライスを一皿、ポテトサラダも一皿、コタツの上に差し出す。
「? 一皿ってオレの分だけ?」
「使用人は主人と食事を同席しない、のですよ。 って違う! 口が勝手に・・・」
そう、メイドとして設定されたオレは、体が勝手にメイドとして振舞う。
無意識のうちに、自分の分は別に用意していた。
「フフン、鈴ちゃん、オレと一緒に食おう」
「あ、ありがとうございます。ご主人様。って、当然だろーが! 居候め!」
オレの分のオムライスもコタツの上に置き、ご主人様の向かいの席に座る。
「メイドさんとコタツに入って、オムライス食うってのもなかなか無いよなぁ・・・。んじゃ、いただきます」
「好きでメイドになったわけじゃねぇよ・・・いただきます」
と、言いつつオレはご主人様がオムライスを口にするのを見守る。
「ん、うまいよ? 鈴ちゃん」
「ほ、ほんとですか? ご主人様!?」
「ん、あぁ、うまいって」
「よかったぁ」
ほんとよかった。ご主人様が笑顔で食べてくれるのを見て、安心すると同時に嬉しくなる。
「ほら、鈴ちゃんも食いなって」
「あ、あぁ・・・Σ オレ今、メイドになってた!?」
「さっきからずっとメイドじゃないか」
食事中にこれからの事を少し話した。
説明書が無ければ、あの露天商だ。ベルをオレに売った露天商しか今のところ当てが無い。
明日から露天商を探し、設定を解く方法を聞きだす。
―――早いとこ、元に戻ろう。
食事の後片付けも終わり、オレのアパートにはゆっくりとした時間が流れていた。
ご主人様はコタツにあたりつつ、テレビを見ている。
オレもコタツにあたりつつ、何となくテレビを眺める。
背を壁につけて、ぼーっとテレビを見ていると、じわじわと眠くなってきた。
――これぞコタツの魔力。や・・・ほんと眠い。
いつしかうつらうつらと船を漕ぎ出した。
リョウタが鈴を見ると壁にもたれかかって、すっかり眠っていた。
すやすやと静かに寝息を立てるメイドは、やはり可愛い。
「・・・鈴ちゃーん・・・風邪ひくぜー・・・」
鈴の反応無し。
すっと、コタツの暖気が逃げないように立ち、鈴のそばに行く。
(・・・元男とは思えないくらい、きれいだ・・・)
寝息に合わせてメイド服を押し上げている胸が上下している。
たわわに実った胸はきれいな曲線を描いていて、
(触ったらやわらけーんだろうなぁ)
自然に手が伸びる。
ふにっ
(うぁ、すげぇ。やわらけー)
むにむに
(起きる? さすがに・・・起きるか?)
「ん・・・ぅん・・・ すーすー」
(まだセーフ!)
鈴がまた静かな寝息を立て始めたのを確認し、リョウタは調子に乗る。
(っつーか、同じ部屋に女の子、しかもメイドがいるのが悪い。うん、そうだ)
脳内で滅茶苦茶な理論を組みつつも、手は鈴の胸をこね続ける。
下半身がコタツに埋まっている鈴をまたぐように、マウントポジション確保。
こね続けている胸がじわりと熱をもってきているのを感じつつ、鈴の寝顔を確認。
「ふぁ・・・ぁ・・・ ん・・・」
(やべ、この表情はエロい!)
静かだった鈴の寝息は熱っぽく、表情も色っぽくなっている。
(吹き飛べオレの理性!)
鈴の豊満な胸に顔を埋める。やわらかい感触と、女の子の匂い。
「ん・・・んにゅ・・・」
ハッと、リョウタが鈴の顔を見上げる。
鈴の眠そうな表情が一瞬にして緊、覚醒する。
「こ・・・このエロご主人様!!!!!!!!」
怯んだご主人様をさらに睨み付け、右拳を固める。
「うわ! せ、設定! エッチなことが好き!」
とっさにご主人様が叫び、オレが跳ね起きようとしてベルが鳴る。
―――ちりりん
『補足設定・エッチなことが好き・実装』
な! 何を設定された!? や、なんとなくわかる。体が勝手に求める。
体の火照りが求めている。さわって欲しい。揉んで欲しい。シテ、欲しい。
「ゃ・・・ぁん・・・や、やだぁ・・・」
自分の体が求めていることに、メイドとしての人格が恥ずかしがる。
「うわ、ごめ、ほんとごめんっ!」
ご主人様が慌てて身を離そうとする。オレの変化に気づいていない。
しかし、離れようとするご主人様の手を、オレの手が掴んで、再びオレの胸にあてる。
「や・・・やめないで・・・その、いい、から」
「へ・・・?」
は、恥ずかしい。顔から火が出るほど、熱い。けれど、体は自然と求める。
「その・・・もっと・・・」
「す、鈴ちゃん?」
「ぇ、えっちなこと・・・して、いいよ・・・」
体の疼きが止まらない。もう、我慢できない。
「すげー・・・設定効いてるぜ」
「! ご主人様が設定したんだろうがっ! しょーがないだろっ!」
束の間、地のオレの性格が出る。
「うんうん、しょーがないな、うん」
「うぁ、エロイ顔して・・・」
ご主人様はすっかり開き直りやがったみたいだ。
ひょいと、オレをお姫様だっこで持ち上げ、コタツ脇のベッドに寝かす。
お姫様だっこされていることに、恥ずかしいやら、嬉しいやらで胸がいっぱいになる。
体がこれからされることを想像して、熱を持つ。
「んぁ・・・からだ、あつい・・・。こんなの設定した責任、ちゃんと取ってよぅ」
胸がドキドキして、うまく動けない。ご主人様になにか怒鳴ってやろうとしても誘うような哀願にしかならない。
「鈴ちゃん・・・エロイよ?」
「い、言うなぁ」
ベッドに寝かされたオレに、ご主人様が覆いかぶさる。
ご主人様と顔が近くなり、オレは自然に目を閉じる。
「ん・・・んむ・・・ちゅ・・・」
ご主人様に、キス、されたぁ。胸が幸せでいっぱいになってる。
「はむ・・・んちゅ・・・っふぁ・・・」
目が潤んでるのがわかる。ほんとにエッチなメイドを体現してる。
オレの脳は既に、羞恥心の抵抗が無くなり、体の求めるままに動いている。
「さわって、イイヨ? ご主人さまぁ」
「うん」
むにゅっ と、オレの胸が形を変える。
そのままご主人様はオレの胸に顔を埋める。
ご主人様の息が胸にあたって、そこからじわぁっと熱が広がる。
「ぁ・・・ん・・・」
気づくとご主人様はオレの背中に腕を回していた。
片腕でオレの体を抱き上げ、もう片方の腕が探すのはメイド服のジッパー。
じじっ、と軽快な音がしたと思うと、するりとメイド服が脱がされていく。
じかにご主人様の手に触られる。あったかくて、どんどんエッチな気分が高まっていく。
―――もう、えっちなことしか、かんがえられない。
ふと気づくと、既に上半身、下半身共に下着のみになっていた。
急にメイドの性格が出てきて、羞恥心を呼び覚ます。
「あ、あまり、見んなよぅ」
「きれいなんだってば。手をどけて? 鈴ちゃん」
「ぁ・・・はい」
メイドなオレは素直に従って、手を自分の顔の横に置く。腰まである髪がさらさらと手に当たる。
「恥ずかしい・・・よぅ・・・」
「きれいで・・・エロイね?」
エロイ。その言葉でご主人様の要求を満たせていると感じて、オレの中のメイドが喜ぶ。
「おっぱい、やわらかいし」
胸を揉む。
「ふやぁ!」
「からだ、きれいだし」
腰をなぞる。
「ひゃんっ!」
「ここ・・・濡れてるし」
下着の上から触る。
「はぁん!!」
「鈴ちゃんは、エ・ロ・い・メイドだね」
肉芽をさする。
「やっ、ちょっ ふぁああっ!!」
体中を電気が走る。
イ、イっちゃった・・・のか。
ご主人様がエロい表情で満足気に頷くのを見て、またオレも嬉しくなる。
「じゃ、いくよ?」
「うん・・・」
ご主人様の体に手を絡める。ご主人様の背中に置いた手で掻き抱く。
このまま胸のドキドキが続くと、体がどこかにいってしまいそうだから。