僕がこうなったのは中学に入って間もない頃、また啓介と同じクラスになれて喜んでいた時だった。
入学式から一週間程が過ぎ、学校の授業にも慣れてきた時期にそれは起こった。
学校が終わって啓介と一緒に下校しながら、
「部活どうする?」
なんて話をしていると──
「うっ……」
急に体に妙な感覚が走った。
「どうした夏海!」
「何だか体が熱い」
「大丈夫か。最近は結構慌ただしかったからな。疲れてるんだろう。ほら、手を貸してみ」
と言って僕を支えようとしたみたい。
でもね、その親切がこの出来事の引き金になるなんて思っても見なかった──。
「うん、ありがとね」
僕はその心配りに答えようと啓介の手と僕の手を合わせたその時、眩しい光が辺りを包んだ。
+++++
「な、何だこりゃああぁ」
「え、何これぇ」
「おい、夏海...お前の体…」
「なにぃ、啓介ぇ……か、体が熱いよぉ──」
「な、夏海大丈夫か」
「い、いやああぁぁぁぁ」
さらさらさら
+++++
その光が途切れる頃、そこにいた僕の姿は以前の僕じゃなかった。
前から女顔だったのは認めるけど、ここにいたのは男の僕が見ても可愛く、華奢な女の子になっていた。
そして、あれから僕達は啓介の家でなぜこうなったのかを話し合っていた。
「で、どうしてこうなったんだろう」
「わかんない……けどここまで変わるなんて」
「不思議だよなぁ。だって男が女になるなんて漫画とかでしか聞いたことないぞ」
「でも親に知られずに生活するのは難しいし、言ってしまったほうが楽じゃないか。お前の母さんならわかってくれるだろう」
啓介の両親は共働きなので帰りは遅い。
このままそれぞれの家に帰っても気になるし、ならこれからの事を話し合った方がいいんじゃないかということでこうしている。
「しっかしますます可愛くなったなお前」
いきなり胸を触られた。
「ひゃん! 何するの啓介ったら」
ちなみに、あれから啓介の家に向かう途中で制服越しに股を触ってみたけど、そこにはつるりとした感触だけで何もなかった。
代わりに、ちょっとばかり膨らんだ胸があったのだった。
「改めてこうして見ると、本当に女になったんだな」
「うぅ、僕は...男でいたい」
「夏海、泣くな。きっと戻れるから。今日のところは帰ったほうがいい」
「えーんごめんね啓介」
「じゃあまた明日な」
◇◆◇
「ただいま〜」
「お帰り夏海、遅かったわね。また啓介君と遊んでたの? ──え゙?」
居間から出てきた母さんが驚きを持った目で僕を見ている。
「あ、あのどちらのお穣ちゃん?」
「ぼ、僕だよ〜。夏海だよ」
「確かに顔は似てるけど……ちょっとバックを見せて」
「う、うん」
そして慣れた手つきで生徒手帳を探しだすと、じーっと僕と手帳を見比べている。
「ね、ねぇ。本当に夏海よね」
「うん...誕生日は6月4日。虫は大嫌い。好きなものはショートケーキ」
「うん、間違いないわ」
(……それでいいんだ)
ギュ。
いきなり抱き締められた。
「いやーん可愛い! 今までも可愛かったけどこんなになるなんて!」
「ちょ、母さん苦しいよ」
「でもどうしたのこの身体。まさか私を驚かせようと忍者ごっこ?」
「ち、違うよ。実は──」
僕は母さんに、いつものように啓介と下校していたら体が急に熱くなったこと、
倒れそうになった僕を啓介が手を掴んで支えようとしてくれたこと、
しかしその直後に僕は光に包まれて、気が付いたらこの姿になっていたことを、順番に説明した。
すると母さんは、
「うーん、それはTS病ね」
と断言した。
「てぃーえす……病?」
「そう。ふとしたきっかけで男の子が女の子になる病気の事。でも服装まで変わるなんて聞いたことないわね」
「そうなんだ。……でもどうして母さんそんなこと知ってるの」
「え? まぁそれはいろいろ情報収集してるからね」
「でも僕はこれからどうすれば……」
「そうね……。じゃ明日病院に行くわよ。もちろん啓介くんも一緒にね」
「えぇ〜」
◇◆◇
それで僕はこれからお風呂に入ろうとしている。
もちろん僕だって男だから女子の裸に興味がないわけがない。
けど初めて見るそれが自分の体だなんて思っても見なかった。
脱衣所でどきどきしながら制服を脱いでいく。
上の服を脱ぎ終えたとき、鏡越しに見える僕の姿は顔を赤らめながらブラをしている小さな女の子そのものだった。
それが自分だと欲情を抑えながら、慣れないブラを外すことに戸惑い、下も脱いでいく。
数分後にそこにいたのは一糸まとわぬ姿で、顔をトマトのように赤くした美少女だった。
「す、すごい。これが僕なんだ」
無意識に僕は手を胸に当ててその感触を確かめようとした。
「きゃっ」
自分でもびっくりするほどの甲高い声で悲鳴を上げてしまった。
家族に気付かれたかと思ったけどどうやら大丈夫だったみたい。
今度はゆっくりと、声を押し殺して片方の胸を揉んでみる。
「うっ、はぁはぁ」
体が火照ってきた。
それと同時に何かお腹のあたりが物足りない印象を受けた。
こんなことしちゃいけないと精神がストップをかけるが、男としての本能がそれを上回る快感を得たいと訴える。
「あっああぁぁぁ」
さらに揉むスピードを上げて刺激を与える。
そしてその攻撃もいつのまにか両方の手で2つの丘を揉みしだいていた。
「や、やだきもちいい、う、ううん」
そろそろ限界が近いらしい。
ますますスパートをかける。
「きゃ、ああぁぁぁ」
目の前が真っ白になり、何も考えられなくなる。
そして僕は脱衣所で倒れた。
◇◆◇
目を覚まして、今自分がどこにいるのかわからなくなり周りを見回す。
そこはさっきと何も変わっていない脱衣所だった。
何分気を失っていたのかはわからないが、どうにか家族にはばれずに済んだようだ。
ふと漏らしたような感覚に気付き、自分の股間を見る。
そこは濡れていた。
その液体は足を伝って床に落ち、天井の明かりと相まってきらきらと光っている。
それを見て僕はさっきまで何をしていたのかを思い出し、急激な自己嫌悪に襲われた。
しかし、本当に胸の快感だけでいってしまった事に、自分が女になってしまった事を実感する。
ふと顔を上げれば、鏡の向こうで快感の涙で線の後ができた少女がいた。
その姿はあまりにも可憐で、抱き締めて守ってやりたいと思っても、それが自分であり不可能なのである。
「何バカな事してるんだろ。早くお風呂に入ろう」
と無理矢理自分を抑えて、まずシャワーを浴びることにした。
「ふぅ、気持ちいい」
火照った体を冷やすため少し温度をぬるめに設定しておいて正解だった。
この体はほぼ全てが変わっているらしく、肌もきめ細かくなっていた。
その肌にあたるシャワーはくすぐったくもあり、気持ちも良かった。
自分で触っても見たけど、すべすべしてまるで石けんのようだった。
その感触を一通り楽しんでから、やはり体も洗っておいたほうが良いかと思った。
さっきまでの事もあるし、家族に知られたらまずいことになるのは間違いない。
そして今、僕は男の時とは違うデリケートな肌に戸惑いながら体を洗っていた。
男の時は少し力を入れて洗うくらいの方がきれいになると思っていた。
しかし今は肌が弱いのか、以前と同じ力加減でタオルをこすると痛みを感じる。
こすった場所を見れば爪でかかれたかのように赤くなっていた。
そんなこんなで上半身を洗うだけで数十分かかった気がする。
前は5分もかからなかったのに……。
そして次は下半身に移る。
そう意識すると見たこともない女性の神秘に、僕はまた興奮してきてしまった。
僕は別に俗に言うAVとか雑誌なんて見たこともなかったし、道端に捨てられたアダルト雑誌も別に興味なんてなかった。
今考えると僕はかなり奥手だったのだろう。
啓介以外の友人の話を前聞いた時、よく道端に落ちていた雑誌を拾って見たりとかしてたらしい。
その時の僕は「ふーん」くらいしか聞いてなかった。
しかし目の前にあるとなると、今まで興味がなかったものでも気になり出すものだ。
お腹のあたりを洗ってから、だんだんとタオルを下げていく。
普通に目線を下げただけでは普段見えない部分は洗えないので、次第に前かがみの状態になる
そして頭がお腹と平行になったところで、タオルの動きを止めてみる。
そして視線を足の付け根あたりに集中する。
「うわぁ……本当にないんだ」
そこには案の定というべきか、やはり僕が男としての唯一な証明となるものがなくなっていた。
代わりに、その場所には平らなものにカッターを入れたように、ひっそりと割れ目が存在していた。
その周りを産毛のように細い毛が包み込んでいたのだった。
「こんなところに男の物が入るんだ……」
自分もその男の子だったのに、今はそれを受け入れる存在になってしまったことに悲しみを覚えた。
「おっと、洗わないと」
さっき蜜を流して、いってしまったことを思い出して、今自分が体を洗っていたことを思い出す。
そーっとその割れ目の周囲にタオルを当てていく。
そしてこすろうとしたとき、
「ぅん! あぁっ!!」
また高い声を出してしまった。
できるだけ力を抑えたつもりだったのにそれでもまだ強かったようだ。
「はぁはぁ……でも良かったかも……」
そしてまたタオルを当ててスッとこすってみる。
「やあぁっ!! き、気持ちいい」
気付けばまた粘液のようなものが分泌されて、足を伝って流れていく。
「い、いいよね。どうせばれないし」
今度は直接指を使ってそっと割れ目を撫で上げる
「ひいぃぃん!!!」
快感をさらに得ようと指を一本穴の中へ差し込んでみる。
くちゅり、と変な音がした。
「ああっ! 何これぇ」
いい、最高これ。
その指を動かしてみると、
「ああっ、ふっ、僕、なに..を。こんなこと……いけないのに」
思考が定まらなり、同時に目の前がぼやけてきた。
限界が近いのだろう。さらに指の動きを早める。
「ああぁぁぁぁっ──!!!」
視界がフェードアウトした
◇◆◇
しばらくして。
「またやっちゃった」
体を洗うつもりだったのに。
さっきよりも汚れてしまった自分の体を見て、激しい自責の念に晒された。
「ああっ、もう早く洗おう」
その後は火照った体を冷やすつもりで、浴室の窓を開けて手早く洗った。
浴槽も10分くらいしか浸からないで早く上がってしまった。
上がると母に、
「ずいぶん遅かったわね」
と言われたけど、
「体を洗うのに時間かかっちゃって」
と言って逃げるようにして自分の部屋のベットに潜り込んだ。
まぁ事実だし。
間違いは言ってなかったと思う。
しかし、部屋に行く直前に母が「ふふ、可愛かったわよ。夏海のオナニー」と言ったのは、
幸いというべきか僕の耳に届かなかったのであった。