指一本、指一本も林は正樹に触れようとはしなかった。
彼は今日の朝話した「特別な人」が正樹であると口では言わなかった。
行動で示した。
その日の夜、涼子の特別性教育が終わると、林は風呂に入った。
林個人の部屋にある立派な風呂だった。
その風呂を、正樹も使うように言われた。
今日、この林の部屋で林に処女を奪われるのだろうと、覚悟をして正樹は体を洗った。
しかし、林は正樹にネグリジェを着せて、ふかふかのソファに座らせて、一緒に映画を見ようと言い出す。
予想外のことに正樹は戸惑った。
自分が、林の恋の対象になっていることは明らかだった。
その理由も明らかである。姉・・・正樹の姉である藤田美奈は、今では東京のテレビ局でアナウンサーをしている。
アイドルにも近いアナウンサー・・・その弟であるというひとつの事実が、正樹を普通の高校生ではなくしていたのだ。
どこへ行っても、彼は、「藤田美奈の弟」として見られていた。
そして、今の正樹の外見は、まさに、その姉が17歳のときの、そのものであった。
それはこの建物ではじめて鏡を見たときにすぐに思ったことだ。
違和感はなかった。女になったときに姉とそっくりなのはおかしなことではない。
考えてみれば、それが自分にだけおこった現象なのはおかしな話ではあるが・・・
その矛盾に気づくものはいなかった。
ただ、藤田美奈にそっくりな少女が藤田正樹の変わり果てた姿なのは、
クラスメートにもあっさりと受け入れることの出来た事実だった。
姉は、正樹よりも8つ年上で、正樹にとって母にも等しい存在だった。
いや、そのかわいさ、美しさ、いい香り、リーダーシップ・・・完璧な女性にすら思えた。
姉は、正樹にとって女神だった。
その女神は、大学に入ったときに東京に行き、そのままその地で花形中の花形、キー局アナウンサーとなった。
いまはもう、ニュースすら読んでいる。一番近くにいながらも、天上の存在だった。
そのスキャンダルをスラ書きたてようとする週刊誌は、正樹にとって悪であり、
訳知り顔で姉を評論するメディアやネットは、正樹の敵だった。
正樹の敵はまだいる。姉を自分のものにしようと画策する多くの男である。
それは、おそらく決して自分のものにはならない姉を、他人のものにしたくないという独占欲だった。
どれほど否定しようと、あれほどの姉ならシスコンにもなる。
そのことをみんな知っていた。だから、そのことでだれもからかったりはしなかった。
ある意味正樹は不幸な少年だった。
今は姉そっくりの「妹」になっていた。あの姉そっくりな妹・・・それはむしろ幸せではないか・・・
そして、姉よりひとつ年上で、中学、高校と姉の先輩であった林が、
姉にどのような感情を抱いていたかは、今や想像に難くない。
そう考えると、不思議な感情がわきあがる。
林は、他の男と同じように姉を奪おうとする敵である。
だが、自分と同じように姉を独占しようとする男であることは、同時に自分の仲間でもあるということだ。
そして、女の体を持ってしまった自分が・・・林にとって、
姉に等しいほどの存在であるということは・・・誇りにすら思える。
林に処女を奪われることの自らの感じる屈辱は感情の片隅に追いやられた。
自分は、いま、美奈なのだという思いすらわきあがってきた。
自分が美奈であるように林に愛されるならば・・・あの姉と同じものとして扱われるならば・・・
自分が男か女かという問題はとても小さな問題で、
自分が男であることなど喜んで捨てることが出来る・・・自分が、姉に、美奈に生まれ変われるのならば。
違うのは、単に自分がその身代わりとして、
代替物として林の慰み者になるにすぎない・・・そういうことだった。
だが、こうして、突然大切に扱われると、美奈を抱けない男が変わりに自分で欲望を満たすだけではなく、
自身が姉に少し近づいた存在であるような錯覚を覚える。
うっとりとした目つきを・・・とまどいながらもソファに座ってしてしまう。
正樹は少しずつ林の罠に落ちつつある。
林は、正樹だけは特別扱いするつもりだった。
他のクラスメートたちからは問答無用で処女を奪っても、
正樹だけは、最初から懇願させて、自ら望んで林の女になるように・・・仕向けるつもりだった。
ゆっくり、時間をかけて・・・林にとっても、正樹の姉、美奈は永遠のアイドルだった。
今、そのアイドルが17歳のときのまま、目の前でネグリジェを着て座っている。
この女を、強制的に落として、性奴隷にするのはたやすいことだが・・・この娘だけは自ら望んで自分の奴隷にしたかった。
永遠のアイドルを・・・17歳のまま・・・奴隷にする。
今年26の若い教師である林にとって、この国家プロジェクトに参加する決定的なインセンティブは、
クラスの中に藤田美奈の弟がいることだった。
彼に藤田美奈と同じ外見を与えて・・・それを自分の奴隷にする。
そのことは、普通の生活を捨てる決心をさせるのに十分な刺激だった。
そして、ロマンだった。
指一本触れずに、映画を見終わって、感想を語り合う。
いつの間にか、林と正樹は打ち解けている。
「先生、それは違うよ。あそこでアニーは愛を打ち明けようとしたんだよ」
「そうなのか? おれはわからなかった」
正樹は映画を見ながら、自分と林を、姉という存在を通して重ね合わせていた。
不思議に、この酷い男が許せるように思えてきた。
指一本、触れないまま、しかし、同じベッドで眠りにつくように命じられた。
しかし、不思議だった。
あれほど冷酷に次々とクラスメートたちの処女を奪っていった林が、
正樹にだけは紳士的に接して、同じベッドの中でも、やはり手も握ろうとしない。
正樹は、実は少しだけ・・・胸を高鳴らせていた。
今日の気分なら・・・すこしだけましな気分で処女をささげることが出来たはずだった。
それでも、今日は処女をささげることがないまま眠りについた。
それはそれで、はるかに安心できることではあった。
だが、ひとつ、正樹の心を「女」に傾けたことがあった。
それは、女としてつけれらる「名前」への期待である。
きっと、自分は「美奈」という名前を与えられる。正樹はそう確信していた。
そのとき、自分は、あのあこがれの姉と同じ外見と同じ名前を持った女になれる。
その日が・・・たのしみだった。
無論、処女を奪われる屈辱への反抗と戦っている、そしてまだずっと弱い気持ちだったが。
次の日の朝になると、クラスメートたちは昨日までの2つのグループから、3つのグループへと分かれていた。
悲しい現実である。
本来ならともに男に戻るために戦わなければいけないはずのクラスメートたちの意思をばらばらにすることに、
林をはじめとするこの建物の中の権力は、成功を収めていた。
処女と、大人の女たちの間には、埋めがたい溝が生まれていた。
あいつらと関わると、おかしくなる。
絶対に俺たちは男を選んで、あいつらも救って、男に戻るんだ。みんなで。
それが処女たちの気持ちだった。
まだ数は少ないながらも、大人の女たちは、そんな処女たちを哀れみさえ持って見ていた。
新しい仲間「涼子」を彼女たちは歓迎した。
そして、涼子は自分の抵抗がどこまで続いたかを恥ずかしそうに打ち明ける。
抵抗が長かった女たちは、そのあきらめの悪さを自虐的に語り、
即効で快楽に落ちた女たちは、自分の根性のなさを自虐的に語った。
しかし、そこには、性奴隷としての開き直りと、同じ快楽を共有するうれしさと、仲間意識があった。
彼女たちの中でも、実は林を巡って駆け引きが存在する。
林への感情をむき出しにして懲罰を受けたユイカも、もうこの輪の中に戻っていた。
だが、ここは、もう完全に女の子のグループだった。
うわべは中がよさそうに見えても、本当になにを思っているのかはブラックボックスそのものだった。
林への思い・・・全ての「大人の女」たちの処女を奪った林、その男に対する特別な感情が全員に生まれている。
それがある以上、第3のグループ・・・いや、たった一人の・・・正樹が、
第3の「グループ」として孤立するのは避けがたいことだった。
処女たちからは、「林に囲われて優しくされている」ことで疎外感を味わって、大人の女たちからは林を巡ってけん制される。
もはや、正樹は自分が完全にこのクラスの中で浮いた存在になってしまったことを、すぐに敏感に感じ取った。
この日も、特別性教育に正樹は立ち会わされた。
この日処女を奪われた「綾」は特別性教育の施される部屋につれてこられたときから、
ソファに座ってただ見つめている正樹に敵意むき出しの目つきをしていた。
「はぁ・・・ん・・・入れてぇ・・・綾のおまんこに・・・先生のおちんちん・・・」
綾が、いつものように性奴隷に落とされ・・・
次々と襲い掛かる男たちのチンポを悦んでみずからしゃぶるようになったとき、もう一度正樹のほうをにらんだ。
その、敵意むき出しの目つきは、さっきと変わらないように見えたが、
その意味が180度違うものになったことは正樹にはすぐわかった。
林を・・・感情のレベルで正樹が独占していることに対して、綾はすでに怒りすら覚えるようになっていた。
その理由も、もうクラスメート全員にとってたやすく想像できるものだったから、なおさらだった。
処女から肉奴隷に落ちる瞬間、所属するグループも変わる。
だが、正樹の「グループ」には入ってこない。
正樹は、完全にクラスメートから孤立した。
綾は、特別性教育が終わると、恨めしそうな目つきでもう一度正樹をにらんでから、部屋を去っていった。
この部屋で、陵辱を受けることなく、手はつけなかったものの、飲み物の置かれたテーブルを目の前にやわらかいソファに座って、
陵辱を受ける綾をただ見ている正樹は、それだけでも完全に敵だった。
正樹が・・・この建物の中で特別な存在である男、林の感情を独り占めしているのだ。
それがなぜなのかはわからないが、処女を奪った林に、大人の女たちはかならず、恋愛感情を抱くようになっていた。
そして、その林の恋愛感情を独り占めする正樹、本来衆人のような扱いうけるはすの処女でありながら特別扱いされる正樹、
それは両グループにとって完全な敵だった。
綾の「無駄な抵抗」にそれでもエールを送りながらも、
その抵抗が終わったときにはやはり安堵をすら感じてしまう正樹。
正樹はまだ、両方のグループを仲間だと信じたかった。
しかし、クラスメートたちは正樹を敵とみなす。
そうなると、ここで、正樹の味方は一人しかいなかった。言うまでもない、林その人である。
「特別性教育」をするときの冷酷な男とは別の男がいるようだった。
正樹に対しては、どこまでも優しく、紳士的だった。
入浴はこの日から正樹が先になり、みずから風呂上りには着替えと、飲み物を用意してくれていた。
眠るときには「おやすみ」と優しく声をかけて、それでも指一本触れようとはしなかった。
さっき特別性教育を行っていた男と同じ人間とは思えなかった。
全て、仕組まれていたのかも知れない。正樹は、すこしずつ、しかし確実に、林の手に落ちつつあった。
大きな目が印象的で、しかし全体の中ではやや美しさにはおとる、
しかし癒し系の女としてはかなりのものであろう「智子」が次の日の生け贄だった。
「いやぁ・・・あぁん・・・」
昨日や一昨日の、綾、涼子と同じように、さんざん前戯をつくされた後で、
もう、さっきはじめて男を受け入れたばかりの智子のおまんこはぐちょぐちょにとろけていた。
そのおまんこから全身に伝わる欲求を沈める方法はただひとつしかない。
そのたったひとつの方法をとらなければ、智子はくるってしまうのではないかと、正樹には思えた。
「いやとかじゃなくて、どうしてほしいんだ。いってみろ!」
林の、恫喝と呼ぶにふさわしい一言に、智子は観念して答える。
その瞬間がどう訪れるのかを正樹が見るのはこれで三回目だ。
「せんせいの・・・おちんちんを・・・」
そこで口ごもる智子。
恫喝はなおも続く。理性で作られた彼女の人間としての城は、その本丸までめちゃくちゃに壊される寸前だった。
「先生のおちんちんを・・・智子のおまんこに入れてください!
そして、思いっきりつきまわしてください。はやく・・・はやく!」
智子は思い切ってそう口にする。
そこで、紙とペンが登場する。
この儀式を終えなければ、永遠に智子が体の火照りを鎮めることは出来ない。
白紙に、自分が女であることを認める一文と、署名を行う。その署名ももう11枚目になる。
その一枚一枚が、男としての人生に完全に決別を告げ、女として、人工の女として生きていく、重い選択のしるしだった。
少なくともその11人にとって、目の前の快楽には、それまでの人生を捨て去るほどの力があったのだ。
「よくできました」
書き終わった紙とペンを握ったままの智子の後ろから、
林は彼女に尻を突き出させて、ぐちょぐちょのおまんこにその肉棒を挿入する。
「はぁ・・・あぁん・・・」
満足げな喘ぎ声をあげて、本当に幸せそうな悦に入った表情を浮かべる智子。
その手から力が抜けて、人生を根本から変えてしまったその契約の証・・・紙とペンを離す。
それを別の男・・・今まで智子の胸をもみ、嘗め回していた男が回収する。
それで、儀式は完了する。
智子は自分が女であることを認め、女としての人生を選び、あとは快楽に身を任せ、
天国へと上っていき、性奴隷へと身を落とすだけ。
末路はわからない。だがこの建物で前の10人と同じ運命を選んだ。それだけは言える。
正樹も目撃した、たしかな事実だった。
この人は、男だったときはいわゆる「おたく」の類だった。
だが、もともとの記憶力がよく、そこいらの萌え系のアニメの類だけではなく、
古典といえる手塚や藤子マンガに造詣が深かった。
彼の影響で本当に価値のある、文学とすら呼びうる日本の文化である「マンガ」に多くのクラスメートたちが触れた。
しかし、その男の名前はもう思い出せない。
今いるのは、マンガに夢中になって、その文学的価値さえ探ろうとする探究心にあふれた男ではない。
ただ、セックスに溺れる女子高生だった。
その、「智子」がそういうふうに溺れていく過程を、やはり正樹はまざまざと見せ付けられたのだ。
一人一人の男には、約17年とはいえ人生があった。
17歳でも、17年分の苦しみがあり、楽しみがあった。
それを、特別性教育は、わずか一日にして意識の根底から塗り替えた。
それが、「特別性教育」という作業だった。
作り変えられた体は・・・その作業に応えてしまう。
正樹は、もう、あきらめていた。
今は自分を敵としか見ていない処女たちは、ひとりとして、この「特別性教育」に抗うことは不可能だろう。
そうすると、選択肢は二つ、もう自分もあきらめてしまうか、自分が意地でもでも抗うかしかないのだ。
いつの日か・・・自分がその場に立たされたときには、かならず抵抗しきってみせる。
そして、みんなと一緒に男に戻るのだ。それがみんなにとって幸せなのだ。
そう信じて、決意する。何度も決意する。
昨日生まれた、自分が姉、「美奈」に生まれ変わりたいというひそかな欲望はこの瞬間には理性によって葬られている。
しかし、不安定な正樹の感情・・・欲望が、その時々によって、「秋の空」よりもはやく、
気まぐれに変わる・・・そのことを客観的にとらえられていない正樹は、
まだ、女として完全にコドモであるといっていいだろう。
正樹のそのうつろいやすい感情は、やはり林の部屋で・・・それは、
いつしか林と正樹の二人の部屋になりつつあったが・・・優しい男に、
愛される「女」として、やさしく、扱われると、早くも変わっていく。
このひとに、処女をささげるなら、いいかな・・・私だけが本当に特別なんだ・・・・
そんな感情と、抵抗を求める理性が絶え間なく戦い続けていた。
しかし、その「大切に扱われている」とか「「愛されている」という実感も、危ういものだった。
指一本、どんなに二人でいるときに微笑みあっても、林は指一本正樹に触れようとはしなかった。
昼間から毎日のように別の処女たちの貞操を奪い、
特別性教育で性奴隷に落として、さらには他の女ともセックスする。
そんな「男」が、いかに特別に自分を扱ったとしても、その「愛」をどこに見出せばいいのだろう。
行動からは、その「愛」は明らかなように思えた。
しかし、その愛をたしかなものだと示す行動は、甚だ不十分なものだった。
それは、ただコドモとして扱われているのだろうか?
同級生が次々と林のチンポに狂っていくのに、愛されていると実感する正樹には指一本触れようとしない。
そのことはかえって正樹を混乱させるようになった。
「結子」「凪子」「美帆」つぎつぎと処女たちは性奴隷へと落ちていく。
その囚人のような毎日が、セックスの官能に彩られた、楽しいものへと変わっていく。
肉体的な快楽が、精神的な苦悩を全て押しつぶして、その目の前にある天国を際限なくさまよう生活。
クラスメートたちは次々とそんな天国へといざなわれる。
正樹は、自分にかかる責任を感じながらも、天使ではない故に、
その一人一人が性奴隷としての自分を選択する過程を楽しむことを覚えていた。
毎日、はっきり言ってしまえば似たような課程で落とされていくクラスメートたち。
だが、特別性教育は、その儀式として、二度目のチンポを差し入れる林以外は、毎日違う男たちが担当していた。
だから、それだけでも微妙に違う。
そして、どこに、いつ、それぞれのクラスメートたちが、女としての自分を選ぶ決定的な契機があったのか・・・
そんなことを見きわめようとしてもいた。
それは、自分のときの参考にしようという口実を頭の中で作り上げていたものの、ただ、楽しみ方の問題だった。
似たような光景を、その微妙な違いで楽しむ。
あっという間に落ちたのが美帆と結子。反対に凪子や涼子はかなり頑張ったほうだった。
そして、全くみんなが同じなこともあった。
それぞれ、そのかわいさ、美しさの系統は違えど、
女としてそれぞれに高い魅力を持った彼女たち・・・それぞれ全然違うのに、
ボーイッシュな雰囲気でショートカットの美帆も、
おとなしい雰囲気でいかにも、美しい凪子も、自分が女であることを認めて、その瞬間林に貫かれる。
そのときに見せる恍惚の表情は、顔の系統もなにもなく、みんな一緒だった。
その瞬間、みんな同じになるのだ。そう、思った。
顔も体も違っても、その瞬間、同じように天国へと連れて行かれる。
そして性奴隷になってしまうのだ。
クラスの中での比率は、逆転間近だった。
処女は、日を負うごとに少なくなっていった。
それは、ただ処女でなくなるというだけでなく、処女たち一人一人の仕事の量が次々に増えることを意味していた。
その事実は、いつしか、処女たちの結束を弱くする。
彼女たちは、いまや一人一部屋の割合で、
前の日「大人の女」たちが気を失うほどの快楽に浸った部屋を掃除していた。
「男に戻る」という目的のもと、一致結束していた彼女たちの感情は激しく揺れ始めていた。
彼女たちが快楽に浸った部屋を掃除することは、さまざまな想像を掻き立てさせる。
いかに、彼女たちが気持ちのよい思いをしていたか・・・
そのことを示す証拠で一つ一つの部屋はあふれていた。
かぴかぴになったローター、まだ濡れているシーツ。
精液と女のにおいが混ざり合ったにおい・・・その部屋をひとりで片付けて、
掃除をして、道具を洗って、それでもその世界にいくことを、天国に足を踏み入れることを拒否するには、
強靭な意志が、理性が必要なのは言うまでもない。
いつのまにか、その作業から解放された「特別な存在」である正樹は、
その時間、林の朝食やその日着る服を用意することが日課になっていた。
幼な妻、そんなことばがぴったりくる。
普通の主婦のように、正樹は昨日二人が入った風呂を洗ったり、ベッドを整えたり
授業の前にそんな日課をこなすようになっていた。
いつしか、林をいとおしいと思う気持ちが芽生えていることを・・・理性は必死で否定する。
正樹は、林の部屋を掃除しているときに、林の持ち物一つ一つにすら愛情を感じるようになりはじめていた。
必死に否定しながらも、掃除すら楽しい。
この仕事は、命じられてやっているものだと、自分に言い聞かせる。
だが、教室に行くのは、林と二人の部屋にいることよりも、ずっとずっと気の重いことだった。
そこには敵ばかりである。正樹がどう思おうと、向こうが正樹を敵としか見ていない。
処女たちは、結束が弱まったことでさらに正樹への敵意を強めて、何とか結束を保とうとする。
大人の女たちは、ますます、林を独占し、同じ部屋で寝起きする正樹へと集団で嫉妬をあらわにする。
彼女たちは、正樹がいなくなれば・・・そのとき、はじめて林を独占する可能性を探ることが出来る。
そのためには、正樹はその彼女たちの競争そのものを阻害する、大きな大きな障害に過ぎない。
クラスメートだったことなど忘れているようだった。
いや、今でもクラスメートなのに・・・もう、同じ仲間には戻れないようだった。
処女たちは、いつか彼女たちのグループに入ってくる。
だから、処女たちへの敵意はむき出しにすることは避けた。
処女たちに軽蔑されても、そんなのはコドモのたわごとにしか聞こえなかった。
しかし、林を独占する正樹は、それとは全く違った質の「敵」だった。
この勢力・・・大人の女たちは、正樹を完全に敵としか見ていない。
一方で、正樹は処女たちには、まだ一縷の望みとして見られている面もある。
正樹なら林を説得できるかも・・・と。
そして、どこかで正樹自身もその可能性を探っていた。
あるいは自分ひとりだけが女として残るかわりに・・・みんなを・・・そんなことすら考えた。
だが、「大人の女」たちからは完全に、この建物の主たる林を独占する、嫉妬の対象に過ぎなかった。
そして一度選んだ女を捨てようとは、彼女たちは全く思っていなかった。
処女たちの期待を打ち砕くためにも、正樹におかしな動きをされては困る。
そう考えると、彼女たちにも、正樹と仲良くしなければならない事情があるはずで、
だから、少しずつ柔らかい態度で正樹に接するようになっていった。
しかし、嫉妬の対象としての敵意はどうしても現れていた。
正樹が感じ取れるほどには現れていた。完全に彼女たちは、オンナに変わっていた。
性欲丸出しで、なんとかして林のチンポを独占しようとする、狂った性欲の奴隷だった。
しかも皮肉なことは、その、正樹の敵を次々と増やしているのは、ほかならぬ林だった。
正樹をだれよりも愛し、宝物のごとく大切に扱う林が、次々にクラスの中での正樹の完全な「敵」を増やしていた。
その「敵」を増やすための行為で、林自身も快楽を得ていた。
次々に美少女たちを処女から、肉奴隷へと落としていく。
男としてそれほどの快楽があろうか。
その男を恋する女の目で見る「大人の女」たち、恐怖の対象と見る処女たち。
ひとり林に愛される正樹。もう、この集団はクラスとは呼べない。
体育祭や、文化祭で、つい最近示した結束は完全にどこかへ行ってしまった。
正樹は、その原因が自分にあることを痛いほど良くわかっていた。
だが、そのことをわかっていても、林の愛情を拒否できないのもまた事実だった。
それは、林がいとおしいからではない。そのようなレベルにまで正樹の感情は育っていない。
正樹が、「美奈」つまりあこがれの姉に対するこだわり、それを捨てられないことがその根本的な原因であった。
姉と同じ外見を持って、それゆえに林に大切にされる。その事実。
あのあこがれて、恋焦がれた姉そのものに自分が変われるとしたら、それはとてつもなく甘美なことだった。
その可能性が100%でなくても、50%でも、たとえ1%でも、
それ以下でもその可能性にかけてみたいと思うほどの・・・姉への憧れ・・・
それは変身願望といってもよかった。そして、林がそれを与えてくれるような気すらしていた。
複雑すぎる感情をかかえて処理できない正樹・・・その毎日は、
かならず、優しい林が指一本も触れずに示す愛情に包まれて終わる。
同じベッドで二人は眠る。
愛情。他の女にあれだけ手を出しながらも、自分にはまったく触れずに示す愛情。
そんなものが信用できようか。普通なら絶対に無理だろう。
だが、この複雑すぎる状況におかれた正樹には、それしかすがるものがない。
林の愛情は限りなく深いものに思え、この世で唯一の味方とも思えるその男への従属を、深めていく。
それが、罠であると、仕組まれたものであると・・・気づきながらも。
他のクラスメートたちがカラダで一瞬にして性奴隷に落とされていくのとは対照的に、
正樹はじっくりと時間をかけて、感情の奥底から、林の愛の奴隷へと落ちる、その過程にある。
そのことに心のどこかで気づきながらも、やはり林の愛情にすがってしまう正樹だった。
林はといえば、自分の前で屈託のない笑顔を見せる正樹を、すでに心の中で「美奈」と呼んでいた。
彼女の処女を奪って自分の奴隷にすることはいかにもたやすい。
だが、処女のままの「美奈」とともに過ごすときをもっと楽しみたかった。
そして、時に冷酷に振舞いながらも、この建物の中で、「美奈」のただ一人の味方を演じきれば、
彼女の方からセックスを求めてくるようになる・・・その日を待っていた。
その日、3時に教壇の前に呼ばれた椎名輝は、日本人の女の子ととしてはよい意味で肉付きのよい、ぽっちゃり系だった。
そのほっぺがかわいくて、美味しそうな女で、全体的にもふくよかなかんじであった。
もちろん、太っているわけではなく、裸にされたときにそのウェストは意外なほど、きゅっとくびれ、
胸はたわわに、もみがいのあるように林がそれをもむ。
「リサ」と名づけられたその女の子は、歯を食いしばって処女喪失の痛みに耐えた。
耐えることが出来なかったのは、快感を表現する嗚咽であった。
「ふぅ・・・ぁ・・・」
処女たちは、毎日、教壇で仲間がひとり消えるのを、
その痛みが早く終わるように・・・と祈るような気持ちで見守っていた。
あれほど痛がっているものが、なぜ次の日には淫乱女になっているのか。
不思議だった。もう、半分のクラスメートが処女をうしない、淫乱女になるところに来ていた。
いつのまにか、処女たちは、その瞬間を合掌して見守るようになっていた。
それは、いつしか今日その痛みを受けている「リサ」がはじめたことだった。
正樹は、そんな処女たちと同じ行動をとっていた。
しかし、この日にはもうその意識はリサではなくて林に向いていた。
先生、せめて痛くなくしてあげて・・・お願い・・・そんなふうに祈っていた。
林は、少し中だるみだった。その実、処女を奪うことも、肉奴隷に落とすことも、もう簡単なことだった。
贅沢なもので、その行為はオナニーと大して変わらないようなものだった。
毎日違う美少女を味わって、感覚が麻痺していた。ただ性欲を処理しているだけである。
むしろ毎日の楽しみは・・・正樹と二人で過ごすプラトニックな時間にあった。
その先には、いつか訪れるその日、正樹の処女を奪う楽しみが待っていた。
あの頃、かなわなかった思いを・・・同じ顔をした「妹」でかなえようとしていた。
本来は美奈の弟だった正樹を、17歳の美奈と同じ顔、同じ体、同じ香りの「妹」に変えて、
同じ名前を与えて、自分の思い通りになる肉奴隷におとす。
しかも完全に自ら望ませて。
背徳的な手段で、あの「高嶺の花」だった美奈、まさにそのものを手に入れたかった。
その望みはあと少し我慢すれば手に入る。
そして、正樹自身も、はやく落としてほしいと思っていた。
奴隷としてではなく、女として、恋心を芽生えさせつつあった。
快楽にではなく、恋に落としてほしかった。そのことをゆっくりと実感していた。
こんな酷い男でも、好きなものは好きだった。
認めたくはなかったが・・・だからこそ、林の言葉と気持ちで、落としてほしかった。
つまり、本人たちは気づいていないが、二人は完全に両思いだったのである。
他の女とセックスする林を見つめながら、正樹はいつしか犯される女に感情移入をして、
うらやましいとすら思うようになっていたし、あとは、他のクラスメートたちとは全く違う、
「恋」という純粋な感情で女としての自分に落ちるのは時間の問題だった。
だから、カラダで強制的に落とすという手段をとらなかった林の行動は・・・正しかったのだ。
特別性教育では、リサは教室で、必死に声を出すことを我慢した反動からか、
「我慢しなくてもいいんだよ?」
という林の一言であっさりと落ち、その先は天国へと駆け上っていった。
正樹は、そのような林を愛しく思いながらも、
自分にいつしかのしかかる責任・・・男を選ばなければいけないという責任を感じていた。
この見慣れた場面に自分が立たされたときに、抗いきらなければならない。
そう、決意を固める。林への思いと矛盾することなど、頭の中でまとめる余裕はなかった。
リサを落としたあと、典子と一対一のセックスを楽しんだ。
一対一のセックスを見るのは、正樹には初めてだった。
嫉妬の苦しみがほんの少しその可憐な顔ににじんだ。
正樹は耐える女になっていた。
林がその日の性行為全てを終えると、二人は一緒に部屋に帰る。
相変わらず指一本触れ合うことはなかったが、「先生、おつかれさま」と明るく一言今日の一日の労をねぎらうことで、
正樹なりに林への気持ちを示そうとした。
すっかりこの日の性欲を使い果たした林の心が、この日最もときめいた瞬間だった。