掛川圭介はトイレで鏡を見て愕然とした。
鏡の中には小ぎれいに化粧をした魅力的な女性がこちらのほうを見ている。
ピンクの口紅をつけた唇がぽかんと半開きになってる。
見たこともない顔だが、彼女は会社でOLたちに支給される女子用の制服を着ている。
圭介がまばたきをすると彼女もまばたきした。
まさか、と思って胸に手をやると、弾力に富んだ釣り鐘型のふくらみが手をはね返した。
鏡に映る自分を圭介はもう一度よく観察した。
まぎれもなく女だ。それもとびきり魅力的な部類の。
どうして自分がOLになっているのか、圭介には訳が分からなかった。
スカートの中に手を入れ股間を探ってみると、
パンティに包まれた股間に、男の象徴は影も形も見当たらない──。
トイレに他の誰かがやってくる気配がした。
こんなところを見られたら!
圭介はパニックに陥っていた。
トイレに入ってきたのは、圭介と同じOLの制服を着た女子社員だった。
何事もなく彼女は圭介の横を通り過ぎていった。
圭介がトイレを飛び出ると、そこは女子トイレだった。圭介には憶えのないことだった。
いつも通り、普通にトイレに入ったはずだったのに……。
そのとき、制服の胸ポケットに折りたたまれた紙が入ってるのに気づき、圭介はそれを広げてみた。
それは『圭介改め圭へ』と題されたメモ書きだった。


これを見てるということは、突然女になってしまって、さぞかし戸惑ってることだろう。
君が綺麗に化粧した顔であわてふためいてる姿を見れなくて実に残念だ。
──訳がわからないって?
何が起きたのか、順を追って説明してあげよう。
君と僕の入社一年目の忘年会のときのことだ。
君は僕とちょっとした議論をして、半分喧嘩のようになってしまったこと……覚えてないかい?
あれは催眠術についてだった。
催眠術の修行をしたことがあるという僕に対して、
君は催眠術なんてインチキの見世物だとずいぶん声高に主張していたっけ。
そこで実際に、君に催眠術をかけてみようということになったんだ。
もっとも、そんなこと君は覚えてないだろうね。
それに関する君の記憶は後で忘れてもらったから。
僕の催眠誘導で君は簡単にトランス状態に入っていった。あんまり簡単で拍子抜けしたぐらいだ。
椅子から立ち上がれなくなると暗示を入れればその通りになったよ。
何度 か覚醒とトランス状態を行き来させて、それはもう深い催眠まで導いた。
もともと君は被暗示性が極端に高いタイプだったんだ。
あれほど強情だった君が、運動支配はおろか、簡単に感覚支配、記憶支配
といった深いトランスステージに入っていく様子は痛快の一語だったよ。
そのとき僕はある計画を思いついたんだ。
そして、君に入念に一連の暗示を刷り込んだ。
まず暗示で君に自分のことを包茎だと信じ込ませ、包茎治療のためにはど
んなことでもしなければ、という強迫観念を植え付けた。
そして、包茎治療を受けるためには女性ホルモンを体に入れなくては、と信じ込ませた。
催眠状態の君はそんな無茶苦茶な理屈でも素直に受け入れてくれたよ。
僕は知り合いのもぐりの薬剤師を君に紹介した。
催眠状態から戻ってきたとき、君の頭の中にはしっかりと僕の暗示が擦り込まれていた。
その日から君は毎日女性ホルモンの注射を自分から進んで受けにいくようになった。
暗示のせいでそれが当たり前のことだと思いこんでね。
一ヶ月もすると男にしては妙に肌がつるつるしてきて、それから尻が丸みを帯びてきた。
半年も経った頃にはしっかりとAカップくらいの胸が思春期の少女よろしくふくらんできて、
顔つきもすっかり女のそれになってたな。
会社中が君の変化を陰で噂してたよ。その変化に気付いていなかったのは君だけだ。
そこで僕は君に新しい暗示をいろいろと擦り込んでやった。
君は会社に性同一性障害だと自己申告して、すったもんだの挙げ句女子社員としての地位を手に入れた。
それが“包茎治療”への障害をなくす近道だと信じこまされて。
君は定期的に僕の自宅へ顔を出して、包茎治療の準備の進み具合について報告してくれたよ。
このころにはもう男性機能が殆ど停止してて、睾丸もだいぶ萎縮してた。
試しに催眠状態でオナニーさせてみると、四苦八苦した挙げ句、
ようやく射精しても精子の入ってない透明な汁が先端から出てきただけだった。
ああ、そういえばあれが君の男としての最後のオナニーになったかな。
それからしばらくして僕は君にアドバイスをした。もう玉を抜いてもらったらどうか、って。
「そのほうが包茎手術のとき邪魔にならなくていいよな」
君が大真面目にそう言ったときは、吹き出すのをこらえるのに随分と苦労したもんだ。
ともあれ、週末に去勢手術を受けてきた君は晴れて玉無しのニューハーフになっていた。
女性ホルモンがもともと効きやすい体質だったのか、その時点で、もう注意して見ないと男とは分からないぐらいだった。
包茎治療に必要な手術と信じて、連休毎に君は嬉々として整形手術を受けにいってた。
前後して、化粧や女物の服の知識もみっちりと勉強してもらった。
勉強した記憶は残ってないだろうけど、化粧品やランジェリーの知識はた
しかに今の君の頭の中に叩きこまれてるだろう?
最初は君のことを変態扱いしてた社員たちも、君があまりに魅力的な女になっていくものだから、
特に男性陣は目に見えて態度が変わっていったよ。
おかげで、ネットで美人ニューハーフOLとして画像が出回ったくらいだ。
そしていよいよ、君は人生の一大転機として“包茎手術”を受けにいくことになった。
完全な包茎手術とは、ペニスそのものを女性器に置き換えることだ。
そう信じた君は、まさしく完璧な手術を受けてきた。
退院後、最初に僕のところへ報告にきて完全な女になった股間を誇らしげにみせてくれたとき。
あのときの君の晴れ晴れとした笑顔といったら。
その一月後に、君の“処女”をいただいたのは勿論僕だ。
トランス状態に落として、“包茎治療の成果をよく確認してもらおう”と暗示を入れ、相手をしてもらった。
君にその記憶がないのは実に残念だな。
記念すべき処女喪失だったのに。女としてはじめてのセックスで、それはもうすごい乱れっぷりだったよ。
それからも君は定期的に僕の自宅を訪ねては、性欲処理を引き受けてくれた。
強引に抱いたこともあったし、暗示で君を従順なメイドにして口で奉仕させたこともある。
そればかりじゃない。
君には男性社員全体の公衆便所になってもらった。
なにせ君自身は自分が女になってるという自覚がまったくないんだ。
みんな、勤務中でも君とすれ違うたびに胸なんて触り放題だ。
暗示で、君にはセックスのことを体にいいストレッチ運動と思いこむように仕向けた。
フェラチオをしてザーメンを飲むとき、君は新発売の栄養ドリンクを飲んでるつもりだった。
ときには“栄養ドリンク”でお腹が一杯になったことがあるんじゃないか?
同僚や上司と夜のストレッチ運動で汗を流すことも頻繁だっただろう?
完全に暗示に支配されてた君はそのことをおかしいとも感じてなかったがね。
会社での業務内容も大事なプロジェクトからは外されて、お茶汲みや来客 の接待時の“目の保養”要員といった、
まあ、コンパニオンみたいな仕事 が中心になってしまったこと、君はいまこの文を読むまで自覚していなかったはずだ。
そう。同期の僕と出世競争をしてた君はもうどこにもいない。
会社の男たちの心身両面に潤いを与えることだけが、いまの君の仕事だ。
──とまあ、ここまで読んできて、だいたいのところは理解してもらえたと思う。君の身に何が起きたかについては。
さぞ僕のしたことに怒り心頭だろうが、その怒りをぶつける相手がいなくなってて残念だったね。
僕は君にある特殊な後催眠暗示を残してた。
もし僕が不慮の事故等でこの世を去った場合。
僕の葬式から三日経った後、君が最初に会社のトイレを使った直後に、いままでの暗示の擦り込みが消えるようにしておいた。
このメモ書きに気付いてそれを最後まで読むことも暗示による指示だ。
そして僕の壮大な催眠術の被験者となってくれた君には、これからある選択をさせてあげるつもりだ。
このメモを最後まで読むと、君は僕に再会することになる。
無論、それは催眠暗示によって作り出された幻覚だが、君にとっては本物と同じくらいリアルに感じられる。
そのもう一人の僕が君の体を求めたとき、それを拒絶することができたら、君は完全に催眠から自由になれる。
すべての暗示の強制力は消え去る。
男性機能の回復は無理だろうが、少なくとも外見的には男に戻って生活することもできるだろう。
女として別な会社で人生をやり直すのも自由だ。
だけどもし君が僕を拒みきれず、女の快感に流されて抱かれてしまったら──。
そのときは、君は永遠に僕に支配される。
君の意識の奥深くに埋め込んでおいた暗示が起動して、君は半永久的に会社の男たちの性欲処理人形になるだろう。
どっちの道を選ぶかはすべて君次第だ。賢い選択をしてくれたまえ。

──君のかつての親友にして、御主人様より


「そんな……」
メモの紙片を持つ手の震えが止まらなかった。
そのとき、圭介の胸が後ろからわし掴みにされた。
振り向くと、そこに亡くなったはずの親友がいた。
──違う。暗示で親友と思わされてたんだ!
男は圭介の胸をこね回した。
豊かなバストを両手で激しく揉まれると、胸の奥がせつなくなるほどの快感が押し寄せてきた。
「や……いやぁぁぁ……」
とっさに出た悲鳴は、驚くほど媚を含んだ甘い女の声だった。
圭介は男を突き放そうとした。
すると、男は圭介の下半身に手を伸ばし、スカートをまくりあげてパンティの上から股間に手を這わせてきた。
滑らかなシルクのパンティが突起物のない股にこすれて、たまらなく感じてしまった。
秘裂に沿って指を前後に動かされると、その動きに合わせるように息が荒くなってしまう。
感じまいとしてるのに、圭介の体には甘い痺れが広がっていった。
焦らすように愛撫してた男の指がパンティの中に滑り込み、もうぐっしょりと濡れていたスリットに入り込んだ。
つぷり。指が侵入してきた。
股間の奥から甘い感覚が脳天まで駆け抜け、全身から力が抜けてしまった。
男を押し返すはずだったのに、腕にもまったく力が入らない。
(そんな! 指を挿入れられて感じてしまうなんて!)
くちゅくちゅと指を動かされると、男では有り得ない内側から響く快感に圭介は頭が痺れたようになった。
何も考えられない。
ただ、ひたすら気持ちいい……。
目の焦点が合わない圭介を、男は優しく床に押し倒した。
圭介が我に返って抵抗しようとしたときは、もう手遅れだった。
床の上で股間を割り開かれ、腰を掴まれた正常位の体勢では、男のペニスに貫かれるのを止めることは不可能だった。
(やめて、やめて──!)
願いも虚しく、熱く膨張したものが秘所にあてがわれ、そのままゆっくりと秘奥に侵入してきた。
灼熱した鉄のように熱く固いそれは、容赦なく圭介を貫いた。
「あ、あ、あぁぁ──!」
すべてを呑み込む大波のような快感が押し寄せ、理性を洗い流した。
頭の中が真っ白に塗りつぶされていった。

次に気がついたとき、圭介は誰もいない廊下で倒れていた。
男の姿はない。
すべては催眠によってみせられた幻だったのだ。
それでも、女の器官には貫かれた感触が生々しく残ってた。
そして、圭介は、男の残した見えない鎖が自分を縛るのを感じた。
拒むことができなかったのだ。圭介の運命はもはや定められてしまった。
“圭介”という男は存在しなくなってしまった。
性欲処理人形──。
起きあがりスカートについた埃を払うと、圭介──圭は、抗いがたい衝動に動かされて、
もう一度女子トイレの鏡の前で化粧を直した。
体を女にされただけでも屈辱なのに、自ら化粧品で女らしく顔を飾り立てる行為は拷問にも等しかった。
それでもやめることはできなかった。
男の気を引きそうな鮮やかな色のルージュを唇に引き、グロスで上塗りをすると、とびきりセクシーな女の顔ができあがった。
それはすべて、男たちの性欲処理人形としての身だしなみとして必要な行為だったのだ。
トイレを出たところで、同僚の若い新人社員の男とはち合わせた。
「お、ちょうど良かった圭ちゃん」
年下のはずの男は、圭を馴れ馴れしく呼び止めた。
「後で会議室の片付けを手伝ってくれないか?」
ブラウスの上から形のいい胸を揉まれて圭は恥辱に青ざめた。それなのに、口から出た言葉は──。
「はい。喜んで」
「じゃ、仕事がひけたら。会議室で待ってるよ」
会議室へ行けばどんなことになるか、圭には分かっていた。
それでも、時間がくると体は勝手に会議室へと向かってしまった。
「待ちかねたよ」
カチャリと内側から扉に鍵をかけ、男はニヤリと笑った。部屋には、他にも数人の男たちが待機していた。
男たちはためらいもなく、圭の体を貪った。
豊かな尻の肉を掴み、圭に悲鳴をあげさせるところから凌辱は始まった。
「いつもの運動を始めようぜ、圭ちゃん」
OLの制服を着たままで圭は男たちに輪姦された。
犬のように四つん這いにさせられ後ろから貫かれながらフェラチオをさせられた。
かと思えば、男の膝の上で腰を振ることを強要された。
ある男には、赤ん坊のように背中側から抱きかかえられ、その屈辱的な姿
勢で放尿させられた。
かわるがわる男たちの欲望を注ぎこまれ、顔にもはだけた胸の谷間にも大量のザーメンをぶちまけられた。
「あン美味しいぃ。ねえ、もっとかけて、もっと汚して!」
己の唇がつむいだ淫らな言葉に、圭は自分が性欲処理人形となったことを思い知った。
体内で射精されるたびに、圭はエクスタシーを迎えた。
──迎えさせられた。犯される悦びなど感じたくもないのに、無理やり歓喜の声をあげさせられてしまうのだった。
そんな姿を男たちは笑いながらデジカメに収めた。
永遠に続くかと思えた狂宴から解放されたとき、すでに外は真っ暗になっていた。
夜道を痴漢に怯えながら、家路を急いだ。
その晩、圭はネット上で男に犯されている自分の画像を見つけた。
そこに写っている自分は、ザーメンにまみれてたまらなく淫乱な表情をした女だった。
忌まわしいはずのその画像を、圭は震える手でハードディスクに保存していた。
心の中の男の部分が、狂おしいほどにその淫乱な女にペニスを突き立てたがっていた。
パンティにじわっと広がった湿りが、圭を現実に引き戻す。
どんなに否定したくとも、いまの圭は犯される側なのだ。
こらえきれず、圭は濡れた股間に手を突っ込み、自らを慰めた。
淫らな己の女体をそうやって自ら犯すことでだけ、圭は自分がかつて男だったことを確認できた。
絶頂に達したとき、頭の中で囁く声が聞こえた。
『おめでとう──』
あの男の声だった。
性欲処理人形として生まれ変わった圭を祝福しているのだった。
深い眠りに落ちていく圭の頬を、涙がひとすじ落ちていった。
暗転──。

  ◇◆◇

「──おい。仕事中だぞ、起きたまえ」
上司の声に、ハッとして圭介は顔をあげた。
いつのまに眠っていたのだろう。
デスクの上にはよだれの跡があった。
「す、すいません!」
「寝不足かね? 体調管理は気を付けてくれよ」
「はい!」
居眠りしてるあいだに夢を見たような気がしたが、どうしてもその内容は思い出せなかった。
きっと疲れてるんだな、と圭介は自分を納得させた。
「じゃあな」
上司は過剰なくらいの親しみをこめて圭介の肩に手を置くと、立ち去っていった。
「さて。仕事の続き、頑張らなくちゃ」
そのとき、フワッと女の香水の匂いが漂ってきた。
あわてて周りを見たが、誰もいない。
おや、と圭介は小首をかしげた。
「おーい、圭ちゃん!」
直後に会議室に人数分の飲み物を運ぶ仕事を命じられて、些細な疑問はもう頭の中から消えていた。

(完)


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