「……んっ……ここは……? なんだ、頭がぼんやりする……」
俺の視界に山積みのダンボールが入ってきた。どこかの倉庫にいるようだ。
体が妙に重い。ぬっくと起きあがると俺は妙な違和感に襲われた。
自分の身体が自分のもので無いような……。手足は自分の思う通りに動かせる。
しかしそこから来る感触や視点の高さが違っているような気がする。
俺は十代の女のようだ。まだ幼さが残りどちらかと言うと可愛らしい体型をしている。
服装はボーイッシュだ。というより男の服を着ている。
ジーンズとトランクスは、立ちあがると落ちてしまいそうな位にガバガバだ。
ここは何処だ? 何でこんな妙な格好を? それに何故俺は1人称が『俺』なんだ?
一体俺は何者なんだ……?
「ちくしょう、なにも思い出せない……」
「目が覚めたようだな」
中年の男が現れ俺に話しかけた。
「すいません。俺、いや僕……じゃなくて私が誰か知りませんか?」
男は皮肉めいた口調で答えた。
「君かい? ……知らない訳ないだろう」
そしてこう付け加えた。
「じきに分かるさ。君が誰で、何故ここにいるのか……」
男はカバンから縄を取りだした。俺の後ろに回りこみ、腕をねじり上げた。
「何をするんだ!」
「君の好きなことさ」
男は微笑を浮かべた。そして俺の腕を後ろ手に縛り上げた。
「これで抵抗は出来るまい」
俺はその時言いようも無い恐怖を覚えた。
人気の無い倉庫の中、若い女が男にされることと言ったら1つしかない。
俺はその一方で、自分が異常な興奮を見せているのに気付いた。まるでこの状態が快楽であるかのように。
俺はこんな事を望んでいるのか? いや、そんなはずは無い……
男はファスナーを下ろす。するとコートの下から肉棒が現れた。それは徐々に俺の顔へと近づいてくる。
俺は、それが異性の性器であるにもかかわらず、全く羞恥心を覚えなかった。
激しい嫌悪感をもって、俺は男を睨みつけた。
「『その眼、気にいらねえなあ。今置かれてる状況が分かってねぇようだ』」
言い終わるやいなや、男の右膝が俺の腹に食いこんだ。
「ぐはっ!!」
「『黙って俺のイチモツを咥えてればいいんだよ』」
今度は右の拳が顔に飛んできた。続けさまに2発、3発……
もはや俺には抵抗する気力は残っていなかった。男が腕を振り上げるだけで背筋の凍る思いがした。
「『その引きつった顔、いつ見てもゾクゾクするぜ』」
何だ……この言葉……
男の言葉の端々が俺の頭の中に響き、そして突き刺さっていく。
決して、男の言い方に恐怖を覚えたのではなかった。もっと違う、もっと恐ろしい何かが脳内を刺激するのだった。
「さあ、咥えてもらおうか」
俺はあきらめて、男の肉棒を受け入れた。恥垢独特の青臭い匂いが口の中に広がり、気分が悪くなる。
そうではあったが、これ以上殴られるわけにはいかない……
「先っぽを舌で舐めろ。絶対に口から離すな」
俺は言われた通りに舌を動かす。舌先を器用に使って、亀頭でも特に敏感な部分に擦り付ける。
尿道口に舌が達するとそこを強く吸い上げた。口内に残尿が入りこんできて、俺は猛烈な吐き気に襲われた。
「気持ち悪いです……」
「誰が離していいといった!」
男はすかさず俺の胴体に蹴りを入れた。
「さっさと起き上がって奉仕しろ!!」
再び肉棒を口に咥えさせられた。俺は舌に肉棒の表面を這わせる。裏スジに当たった時、肉棒がピクッと跳ねた。
本能的にココが急所だと分かり、そこを中心にせめる。肉棒に血液が集まり、だんだんと熱を帯びていく。
ドク、ドク……
血の動きが舌に伝わる。それに合わせるように、尿道口から粘液が流れてきた。
それはとても苦く、到底耐えられるものではなかった。
「苦いっ!! ダメぇ……」
「1度言われたことも理解できないのか! このクズめ!!!」
俺は顔を蹴り上げられた。そしてバランスを取れずに仰向けに倒れこんだ。
男はそれを見て俺の腹を踏みつけた。何度も、何度も、なんども……
「何で俺が……レイプされなきゃ……」
俺は高くかすれた声で、半ば独り言のように問いかけた。
「何故かって!? これは笑わせる。貴様が一番良く知ってるはずだ」
男は軽蔑したような視線で俺を睨み付け、吐き捨てるように言った。
俺が一番知ってる……? 俺が何をしたって言うんだ……
俺は男を見ていた。
その男は俺を見ている。目の奥に怒りや軽蔑の情を燃え上がらせて。
「思い出せないのなら教えてやる。私は北島まどかの父親だ……」
きた……じま……まどか……
その名前を聞いたとき俺の後頭部に鋭い痛み、脳の内側に突き刺さるような痛みが走った。
次の瞬間、頭の中におびただしい量の映像が流れ込んできた。
「お、おれは……あああああああ!!!!」
「思いだしたか。ならこの場所を知らないはずはあるまい」
俺の脳裏に1枚のスライドが浮かび上がってきた。
まさにこの場所で俺が若い女性を……犯している絵。必死にもがいて抵抗する17〜8の少女。
そして彼女の服を力ずくではぎ、まだ濡れもしない秘部に無理やり肉棒を突き刺す俺。
「やめて!! いやああああああああ!!!!!!!」
気の狂ったような絶叫が、涙ぐむ女の映像と一緒に生々しくよみがえる。
俺も……同じようにされるのか?
無意識的に背中が身震いを起こした。
「さっきまでと目つきが違うな。己のした事に怖気づいたか? これから同じことを貴様にしてやる。天国のまどかもきっと喜ぶさ……」
それだけ言うと、男は再び俺を押し倒した。
突き出した肉棒は俺の唾液で底光りしている。それは今度は迷うことなく俺の秘部にあてがわれた。
ぶすり、ぶすり……肉の中にめり込む音が、俺に激痛を運んでくる。
「いたいっ! やめてええええ!!」
「まどかと同じ苦しみを味わえ!!!」
男の表情は、怒りからいつのまにか笑みに変わっていた。
男は肉棒を力任せに抜き差しする。
接合部はほとんど乾いていて、摩擦が大きくなるにつれて痛みも強くなる。
それでも、内側から次第に快感も感じられるようになった。痛みとは似て非なる痺れたような感覚。
目の前の地獄から逃れるには、これにすがるしか無かった。
自分の精神をそこに集中させる。激痛を意識の外に持っていこうとする。
すると電撃を浴びた感じが強まってきた。俺の声にも喘ぎ声が混じってきた。
頭の中まで火照ってきたころ、秘部に熱がほとばしった。
膣内に男の精液が噴き出たみたいだ。男が肉棒を抜くと、赤と白の液体が混じって出てきた。
「俺のチンコを綺麗に掃除しな!!」
男は興奮したように叫ぶ。うつろな意識の中で、俺は右手をかけ口に咥えた。
慣れたような舌づかいで性感帯を確実に刺激する。
萎縮した肉棒を指で握って、管内に残った液を外に追い出す。
そして尿道口からそれを吸い上げて飲み込む。
俺は男の肉棒を夢中でしゃぶっていた。
「次はこっちに尻を向けて四つん這いになれ!!!」
言われた通りの姿勢をとった。男は俺の腰に手をやり、たもとに引き寄せた。
肉棒は再びいきり立ち秘部に挿入される。振動や摩擦が心地よい。
「……あぁん……はふぅ……」
「無様だなぁ……娘を殺した人間とは到底思えない」
俺はハッと我に返った。一体俺は何をしてるんだ……
「ん、てめぇの好きなように……あぁんっ! させるか、ふぅん……」
「身体の方は完全にメスじゃないか。何を今さら……」
男は腰の動きを早めた。さっきまでは望んでいたはずの快感も、もはや苦痛でしか無い。
男に犯されて……感じてる……男なのに……
必死に目を背けようとするが身体の火照りは止まらない。
「おれは……男だ……はぅっ!!」
「本当はチンコが欲しくてたまらないんだろ?」
「違う!! そんなことは──」
男の腰が運動を止めた。膣口が物欲しそうに痙攣する。
下腹部全体が猛烈にむず痒い。俺は自分から腰を動かしてしまった。
「ほら言った通りだ。この具合では乳首もヒクヒクしてるだろ」
意識が一気に両胸へ向けられた。それだけで乳首が無性にくすぐったい。
手で触れることが出来ず、もどかしくてたまらなくなる……
「それにクリトリスだって」
「やめて! もう、言わないで下さい……」
「自分が女だと認めれば、快感を快楽と思えば、すぐ楽になれる」
女と……認めれば……楽に……
「『キモチイイってヨガってりゃいいんだよ』な?」
よがれば・・それで・・・・。
「そうそう、確か『女は男に犯される道具』だったなぁ」
ドウグ……オカサレル……タメノ……
そうか……わたしは……
「……イイ……もっと……」
「なんだ? 聞こえないなぁ」
「もっと……もっと気持ちよくして! 奥まで突いてぇ!!!」
簡単なこと……
「チンコいいよぉ!! もっと激しく掻きまわしてぇ!! わたしのマンコをグチャグチャにしてええ!!!」
これが歓び……これが幸せ……
「はぁぁん!! イッちゃう、ダメぇ!!! イクううううう!!!!!」
ほんとだ……らくになれた……
「これで貴様を殺せばすべて終わりだ」
男はナイフをわたしに向けた。
「こ、殺さないで、ください……」
わたしは何かに震えながら言った。わたしは泣いているようだった。
「なんと言っても……」
男の声が詰まった。
「ま、ど……」
そして力なく、そばの土のうにナイフを突きたてた。
「……その涙が偽りでないと信じよう。もう二度と会うことも無い……」
男はそう呟くと倉庫から出て行った。
わたしの目は未だにナイフの方を向いていた……