◆プロローグ◆
もはや帝都に戦争の傷跡はなく、すでに終戦から50年の月日が流れていた。
かつてこの呪われた街で起こった全ての事を飲み込むように雑踏と喧騒が辺りを包み、
丑三つ時を過ぎてさえ不夜城の如くネオンが輝いていた。
この街の交通は飽和状態に近く、地下鉄や地下高速道路の建設が続いていた。
そして一つの工事が竜脈を切ってしまったため、あの忌々しい事件の原因となった魔人を復活させてしまったのだ。
魔人の名は加藤保憲。帝都を呪い平将門の子孫と戦った者だ。
眠らない街新宿。今日ここで起きる不幸な出来事をだれが予測したであろうか?
柴田純という名の拳銃嫌いの刑事、仲間は彼をジーパンと呼んでいた。
彼は今ある犯罪組織を追い詰めようとしていた。会社に姿を変えた暴力団組織。
そこは武器・麻薬・女性あらゆるものを扱う闇の商社だったのだ。
その組織によって多くの者が麻薬におぼれ、武装抗争をし、そして死んでいった。
拳銃嫌いの刑事はその状況が許せなかった。そして決然とその組織に挑んでいった。
彼に待ち受ける過酷な運命にまだ誰も気づいていない。
とある大きな病院の手術室。外科医、直江はそこで手術の執刀をしていた。
普段は口数の少ない普通の医者だったが、彼には他人の知らない第2の顔があった。
彼は大病院の医師であり、そして大金をもらえばどんな患者のどんな手術でもするダーティーな医師でもあった。
彼の手術は闇の商社の商品にもなっていた。
拳銃嫌いの刑事はこのダーティーな医師を足がかりに闇の商社を潰そうと考えていた。
つい昨日までは・・・。
◆1.従順な女 ◆
バーの薄暗いボックス席に背が高く厳つい顔をした男が座っていた。
その男の股間には焦点の合わない目をした美女が舌を這わせていた。
男が身動ぎもせず大量の白濁を女に注ぎ込んだのを見計らったようにタキシードを着た別の男が現れた。
「どうでしたか? カトウさん?」
「これが本当にヤツなのか、直江?」
「ええ、そうですよ。あなたが忌々しく思っていたあの」
「余計な事は言わなくていい」
「・・・・」
「コイツはなぜこんなに従順なんだ?」
「呪いをかけましてね、まあ私の腕前とあなたの能力を持ってすればたやすい事です・・・」
「オーナー、お客様です」
ホスト風の男が直江と呼ばれた男に話しかけた。
「ここには客は取り次ぐなと言っただろうが!」
直江はホスト風の男の腹に膝蹴りを入れた。
「おいおい、直江くん、医者が怪我人を増やしてどうする?」
恰幅の良い初老の男がドアを開けて入ってきた。
「しゃ・・・社長!」
「なんだ、カトウも来ていたのか。調子はどうだね?」
「お前になど用はない」
「加藤保憲、お前が存在し続けるために必要なものを供給しているのがワシだと言う事を忘れん方がいいぞ」
場の雰囲気が凍りついた。耐えかねた直江は社長と呼んだ男に向かって言った。
「ところで社長、今日のご用件は?」
「柴田の事だ。あの犬を仕留めたそうだな?」
「仕留めたなどと人聞きの悪い。彼の幸せに手を貸しただけです」
直江が答えると、
「ふん、気に入らんな」
そういって加藤は席を立って出て行った。女はキョトンとしたままその場に取り残された。
◆2.その女ニューハーフにつき◆
「ところでその女は?」
「この店の商品ですよ。ただし期限付きのね」
よくよく見るとその女には喉仏があった。
「ニューハーフなのか?」
「ええ。彼女の幸せと我々の幸せを考えて体を作り変えたんですが・・・、途中で急患が入ってしまいましてね」
「まさか、こいつが柴田なのか?」
「社長はご察しがいい」
「大丈夫なのか?・・・コイツには散々苦労させられたんだ。確証が欲しいんだが」
「大丈夫です。催眠術と呪いで彼女は勝手には動けません。まあ、せいぜい稼がせてもらいますよ」
社長と呼ばれた男は鋭い視線を美女に向けたが、美女は相変わらず虚ろな目で微笑んでいた。
「おっと、こんな時間だ。彼女には店で働いてもらわないと」
そう言うと直江はホスト風の男を呼び、女(?)を連れて行かせた。
「さっき言っていた呪いというのは何だね?」
「彼女を幸せに導くために、通常の催眠術では解けてしまっては厄介なので、強力な方法をとったのですよ」
「ふむ、直江くん、いくら医師だからといって洗脳を正当化するような発言は良くないよ。
どうせワシらは死んだら地獄行きなんだ。君も私の前でぐらい正直になってはどうかね?」
「社長がそうおっしゃるなら」
そういって直江は説明をはじめた。
◆3.女の正体◆
「柴田を無理矢理性転換させたのは他でもない、処分する時に足がつかないようにするためと、
ヤツ自身を始末する費用を稼がせるためです」
そういいながら手早くリモコンを操作してプロジェクターを展開しつつ説明を続けた。
「まず、女あるいはニューハーフであれば男の客を取らせる事が出来て収入につながります」
「うむ、男のままでは買い手が限られるな」
「その上、行方不明の男性刑事がニューハーフとして男に抱かれているとは誰も思わないでしょう」
プロジェクタには先ほどの美女が大勢の男と行為をしているのが映っていた。
どこまでも従順で清潔な娼婦。そして多くの者に恨まれていた存在の堕落。恨んでいた者達は喜んで大金を払った。
「最後にはホルモン過多にでもして、催眠術で自殺でもさせれば、鬱になって自殺したと判断されるでしょう」
プロジェクタに映る美女は嬉々とした表情で男に跨って腰を振っている。
「ヤツが逃げ出した場合どうなる?」
「彼女には3つの仕掛けをしてあります。一つ目がこの場所から1km以上離れた時に発動する仕掛けです」
「ふむ」
「1km以上離れると、彼女自身の孤独感から自殺衝動が最大になるようにしてあります」
「自殺衝動では甘くは無いかね?」
「そのために2つ目の仕掛けがあります。『死ぬ』とか『殺す』という言葉に敏感に反応し半狂乱になるようにしてあります」
「自殺を止められても、死ぬ理由を聞かれると暴れだすというわけか」
「そして3つ目です。3回半狂乱になった時、彼女自ら舌を噛み切るようにしてあります」
「暴れながら舌をかむか。面白そうだな」
「社長はご覧になりたいですか?」
「無論だ。私のところのかわいい社員が何人ヤツにやられたことか・・・」
「元を取ったらご覧に入れましょう」
「ところで催眠術で人を自殺させられるのかね?」
「カトウの呪術的能力も使っていますので万全です」
「そうか。楽しみにしているぞ」
◆4.仕掛けられた罠◆
そうしていると、プロジェクターの中の様子が大きく変わった。
−死ぬほど感じさせてやるぜ−
彼女を抱いていた男が不用意に発した言葉が引き金だった。
「し・・・死ぬ・・・死ぬの・・ダメ・・・死ぬの・・・ダメ!!ダメェェェッ!!!」
彼女は手足をバタバタさせて周りに居た男たちを振り払おうとした。
「おい、鎮静剤を打て!」
直江は叫んだ。
ホスト風の男たちが彼女を押さえつけようとした時、彼女が雄たけびを上げ始めた。
「うぉぉぉぉぉ、おりゃ! どりゃ!」
彼女は男の一人の胸倉をつかみ、裏拳を入れ始めた。そこにはかつての刑事柴田純の勇姿が垣間見れた。
しかし、多勢に無勢、彼女はすぐに取り押さえられ、鎮静剤を注射された。
「さて、残りはあと2回ですね。まあ今日の客で今までの実費はほぼ回収出来たんですが・・・」
「まだまだ稼ぐつもりか?」
「そうですね。あの刑事のせいでかなりの損失を受けましたから。その分は彼女に返してもらわないと」
「3回目はうちの社員にやらせてくれ。ヤツに借りがある社員が返したいと言っているんだ」
「わかりました。それでは私は彼女の診察に行ってきますので。失礼」
直江はそう言うと部屋を出て行った。
病室に向かう途中どうやったらもっと稼げるか?直江は考えていた。
「M嬢に仕立ててオークションにかけたらどうだろか?」
直江は催眠術をかけなおしてその準備をすることにした。
◆5.K氏の趣味◆
彼女のオークションは順調に進んだ。そしてある政治家が落札をした。
その政治家には特殊な性癖や大学の同級生や吉原の芸者をプレイ中に殺したなどといううわさが絶えなかった。
変人と言われつつも高い地位に登れたまれに見る幸運の持ち主だった。
直江は事前に十分な説明を行った。
無理矢理女にした元男である事、そして「死ぬ、殺す」などの言葉がキーになっている事、
どんなに傷つけようとどこからも苦情が出ない事、場合によっては殺してしまっても良い事を。
変人政治家は自分の事を「ご主人様」と呼ぶよう彼女に命じた。
そしてプレイが始まった。
「ご主人様ぁ〜」
彼女は甘ったるい声で呼んだ。呼ばれた当人は彼女に縄をかけている最中だった。
「どうした?」
「私のここ、変。べちょべちょしてきてるよぉ」
催眠術と呪いのせいで幼児退行してしまっている彼女は恥ずかしがりもせず言った。
「ちょっと待ってろ、今もっと気持ちよくさせてやるから」
"ご主人様"は彼女を高手小手に縛り終わると、一本鞭を手にした。
「いい娘だ。痛みに耐えるんだぞ」
そう言うとご主人様は鞭を振り下ろした。最初のうち彼女は痛みに泣き叫んだ。
しかしそのうち直江の催眠によって植えつけられたM性のスイッチが入ったのか、腰を振りながら甘い吐息を吐き始めた。
足の裏や脇腹に数発打ち込んだ後、"ご主人様"は最後のとどめとばかりに渾身の力を込めておしりに10発連続で振り下ろした。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
彼女は叫び声を上げ、腰を震わせイった。
「痛みに耐えてよくがんばった! 感動した! 美しかったぞ!」
"ご主人様"は言った。
大いに感動し大興奮した"ご主人様"は職場での前任者の犯したミスをここで繰り返してしまうとは誰も思わなかった。
「お前の意識改革を断行する。次は殺す寸前までいたぶってやるぞ」
その言葉を聴いたとたん、その狂宴はお開きになった。やはり彼女が暴れだしてしまったのだ。
あろう事か麻縄を引きちぎってそこらじゅうの物を投げ始めたのである。
止めに入った黒服たちのうち3人は直江の治療の元1週間をベッドですごさなければならないほどの傷を負った。
"ご主人様"が直江に残した捨て台詞は「残念だ。ここは非戦闘地域だと思っていたのに」だったという。
本気で言ったのか、冗談だったのか、直江もはかりかねていた。
◆6.屈辱の宴◆
直江は"社長"に電話をかけた。柴田刑事の処刑を実行するために。
"社長"は"社員"をつれて現れた。
「直江、これで好きにさせてもらうぞ」
そう言うと"社長"は直江に1万円札の束を2つ渡した。
「こんなに頂かなくても・・・」
「まあとっておけ。じゃあ、後は好きにしろ」
"社長"は"社員"に向かって言った。
「これが本当に柴田なのか?」
「そうだ。おまえらの恨み存分に晴らすがいい」
そう言うと社長はその部屋を後にした。
彼女は注射と催眠術ですでに発情していた。
そこに若い男の匂いをかぎつけて雌豹のようなすばやい動きで男の股間に跪きジッパーをおろした
猛々しい男のモノはまだ軟らかかったが彼女は構わず舌を這わせ始めた。
男はその様子を無言で見ていた。
男のモノが固くなり始めた時、彼女の動きが止まった。
彼女の頬には一筋の涙が流れ、目にはかつての輝きがほんの僅かだけ見えた。
女にされ、催眠術をかけられ、自分ではない人格によって屈辱を受け入れさせられている事に対する悲しみと、
それでも誇りを失うまいとする心がそこには見えた。
「その瞳を待っていた。腑抜けたお前など痛めつけても面白くも無い」
男は言った。しかし彼女は二つの自我がお互いの動きを牽制しあっているのか、しゃべれもしなければ動けもしなかった。
男は彼女の両手首をそろえて左手でつかみ、彼女を引っ張りあげた。そして右手で平手打ちをはじめた。
最初のうちは彼女は声さえもあげずにいたが、次第に甘いあえぎをあげ始め、瞳にはみだらな色気しか残らなくなった。
「ふん、つまらんな。淫乱な心に負けたか。もっと屈辱を味あわせたいんだがな」
男は彼女の両手に手械をかけ帽子掛けに手械をつるしシャワーを浴びに行った。
男が戻った時、彼女は股間をしとどに濡らし、焦点の定まらない目で虚空を見つめていた。
「正気には戻らないか。屈辱を味あわせるどころか天国に連れて行く事になるとはな」
男は彼女をそのままにしてバーボンを飲み始めた。
彼女は男のモノを欲してもがいたが手械に固定されているためむなしい努力に終わった。
◆7.正気と狂気◆
男がグラスを置く頃にはすでに彼女の太ももには幾すじもの水跡が出来ていた。
その瞳には輝きはなく、ただ漆黒の闇を映すだけだった。
男は彼女の正気を取り戻そうと、手械を引いてバスルームに運び水のシャワーを浴びせた。
はじめのうちはなんとか男のモノを自分に導こうとしていたが、冷たさのせいか少し正気が戻ったのか動きが止まった。
顔にもシャワーがかかっていたため、涙は見えなかったが彼女の目は赤く腫れていた。
男はシャワーを止めて手械をシャワーのホースに通し、シャワーヘッドをフックに掛けた。
そして、部屋に戻ると持ってきていたバッグからろうそくを取り出し火をつけた。
男がバスルームに戻ると彼女の瞳には少し輝きが戻っていた。
男はおもむろに彼女の乳首めがけて溶けた蝋をたらした。
はじめのうち彼女は口をつぐみ耐えていた。
しかし体に植えつけられた欲望が意志の力を超えていたのか、瞳の輝きが鈍ると共に口から甘い声が漏れ始めた。
屈辱に耐えようとする顔には涙の跡が一筋刻まれていた。
「そうでなきゃ復讐にはならない」
しかしその瞳が輝きを失う頃には彼女自ら腰を振りおねだりをするようになっていた。
◆8.崩壊◆
男は再び彼女の正気を取り戻そうと水のシャワーを浴びせたが、今度は水のシャワーさえも彼女には効かなくなっていた。
スパンキングやつねりなど色々試したが、彼女を喜ばせるだけで正気に戻す事は出来なかった。
「とうとう壊れたか。まだまだ復讐し足りないが仕方ないな」
男はあきらめて彼女の中に挿入することにした。
彼女は歓喜の声で男のモノを受け入れた。
男は前の穴に自分のモノを、後ろの穴に先ほどの蝋燭を入れて腰を動かした。
彼女は甘い吐息を吐き続け、ついには呼吸困難に陥った。
男は構わず腰を動かし続けた。彼女は大きな叫び声を上げて意識を失った。
男は腰の動きを止め後ろの穴に入っている蝋燭を動かし始めた。
蝋燭の刺激に意識を取り戻した彼女は、苦しそうな表情をしながらも、再び甘い吐息をもらし始めた。
男はそのまま蝋燭を彼女の後ろの穴へメリメリと押し込んだ。
上に行くほど太くなっている蝋燭が彼女の体に全て入り込んだ時、彼女は歓喜とも苦痛とも取れない奇声を発し再び意識を失った。
男はその様子を見届けた後、再び腰を動かし始めた。
男が腰を突き出すたびに彼女の後ろの穴からは血がにじみ出ていた。
しばらくして彼女は意識を取り戻した。
男は体位を変えながら彼女を衝き続けた。
体位が女上位になった時、男は頃合いだと思ったのか口を開いた。
◆9.その死◆
「これでお前は本当に死ぬんだ。いいざまだ」
それをきっかけにして彼女は舌を噛み切った。口からは血があふれ出し、頬を伝って太ももへと落ちていった。
滴り落ちる血を手のひらに受け止め、柴田はそれをまじまじと見つめた。
「なんじゃぁこりゃぁぁぁぁ!!」
「はははは。お前はもう助からないぜ」
そういいながら男は腰を動かした。柴田のナカで男のモノが動いた。
「うぅ・・・」
柴田は抵抗を試みたが男に両手をつかまれてしまった。男はさらに律動を強めた。
「死に・・たく・・ない・・・うぅぅ・・・な・ん・で・・・」
男が突くたびに柴田は嗚咽を漏らした。苦しさの嗚咽の中に妖しい響きが混じり始めた頃、柴田は白目をむき始めた。
「これでこの世の見納めだ。逝っちまえ!」
男が精を放つと同時に柴田は潮を吹きながら痙攣した。失血によるショックなのか、イったのか、それは分からなかった。
男が抜け出すと柴田は力なく倒れた。
モニターで見ていた直江は、男が戻ってきた後柴田のいる部屋に向かった。
直江が部屋に着いたとき柴田はまだ痙攣していた。直江は脈を取ろうとしたがもうすでに手で分かるレベルではなかった。
◆エピローグ −帝都崩壊前夜−◆
「良いものを見せてもらった。どうすればこの街の怨念をさらに強く出来るのか分かったぞ」
「どうするというんだ? カトウ」
「男を美女に変え、女どもは醜くする。嫉妬と憎悪の渦巻く街になる。さらに恥辱を与えれば帝都の怨念も復活するだろう」
「それは困るな、わしは女になどなりたくない」
「お前らには一週間やろう。その間に逃げるが良い」
「そうですか。それでは私はニューヨークにでも行くことにしますよ」
「そうだな。わしも早々引き上げることにする」
空には暗い雲が立ち込めていた。
街を行きかう人々は何も気づかぬままいつも通りの生活を続けていた。
- END -