「見ているだけで良いの?」
重苦しい空気を破ったのは香織の一言だった。勝人はまるで石像でも見ているかのように固まっていた。
「川口……」
「誰にでも転機って言う物があると思うの」
「でもそれは……」
「私はあの時のくじ引きで黒を引いた時だったのよ」
「不運と言うには不条理すぎるけどな」
「誰かがやらなきゃならない事をたまたま私が引き受けただけよ」
「しかしそれは」
「それ以上言わないで」
「川口……」
「それ以上言わないで。お願いだから」
勝人はガックリとうなだれた。僅かな期待が胸に残っていたのかもしれない。
何かの手違いで女性化されること無くあいつが生きてるんじゃないか。
もしかしたらどこか遠いところで順番待ち中に法律が変わるんじゃないか。
薬を打たれて施術されても上手く行かずに男のまま残ってるんじゃないか。
そんな都合の良い話がこの世の中にあるわけが無いと理解出来ない年ではないのだが……
気が付くと香織は勝人の前に膝立ちになっていた。ゆっくりと顔を起こす勝人。黙ったまま見つめあう二人。
かつて男同士のアイコンタクトで何度もパス交換した二人が、今は男女になって何かを交換している。それはもしかしたら心からの愛情なのかもしれない。
「勝人……Tシャツまで濡れてるよ」
そういって香織はゆっくりと勝人のTシャツを脱がした。鍛え上げられた勝人の上半身が月明かりの中に姿を現す。
ボクサーどころかプロのロードレーサー並みに体脂肪率の落ちきった肉体。香織は思わず声に出した。
「無駄の無い体って綺麗よね……」
「川口……」
「お願い……かおりって……呼んで。お願いだから……」
「でも、俺の知っているお前は川口ま──」
そこまで言った勝人の口を香織の唇が塞いだ。柔らかくてフワフワで、なにか良い匂いのする香織の口がまた近づいてくる。されるがままに2回目のキスをし
た。
「お願い、その名前で呼ばないで……つらいから……かおりって呼んで」
至近距離で見詰め合う二人。互いの吐き出す息が鼻をくすぐるほどだ。
「わかったよ……かおり……香織……香織!」
そう言って勝人は香織を押し倒した。ソファーの横で香織は部屋の天井と勝人の顔を見ている。両手を万歳状態で押さえられ身動きの出来ない香織は笑ってい
る。
「ありがとう……」
「香織……俺を男にしてくれるか?」
「うん……私も女にしてね」
「もう女じゃないか」
「まだ女の子だから……」
「女ってのは、難しいな……」
「やさしくして……おねがい……」
身動きの取れないまま香織は勝人に唇を奪われた。不器用に重ねた唇を強く吸われた時に香織は思った。
勝人の子供が欲しい……
そのまま瞳を閉じた香織の体を勝人の手がまさぐりだす。
「まさと……心臓の音が聞こえるよ……私もドキドキしてる」
「ホントか?」
勝人の手が無造作に香織の乳房をつかんだ。既にピンとたっている乳首がグリグリとくすぐられて痛いようなくすぐったいような、ゾワゾワとする波を伝えて
いる。
左の乳房をもみながら勝人の口と舌は右の乳房を攻略していた。舐めて吸って甘噛みして。舌先のザラつく部分がヤスリの様に乳首を攻める。
薄暗い筈の視界が明るくなっていくような錯覚。快感の波が寄せては返す海のようだった。
「あんっあんっっっ、ああんっ……」
乳房をもみ続けていた勝人の左手は香織の秘裂を攻略し始めた。既に痴蜜をたっぷりと噴き出している。
勝人の両手は香織の両腕を解放したはずなのだが、自由になった香織の手は部屋のカーペットを掻き毟るだけだった。
「香織の中がすごい事になってるよ」
グチュッグチョッグチュッ……
これ以上無い淫猥な音が香織の耳に届く。それは自分の体から出ている音なんだと思うだけで体の芯が熱く火照った。
勝人の中指が僅かな隙間から侵入を繰り返し、やがて深い穴の奥へ入っていく。
かつて施設で夜の戯れをした沙織の指とは違う、太くて節くれだった指が香織の中をかき混ぜていた。香織の視界に星が飛び回るほどの刺激が濁流となって押
し寄せる。
「あ゛ぁ゛ぁ゛! だめ゛ぇ! あ゛ぁっ! まさと! いくぅぅぅぅぅ!」
いつの間にか中指に薬指を添えた勝人の右手は、強く激しく香織の女である部分を責め続ける。
香織の背中が弓のようにしなり顔を左右に振り乱して声を上げている。とめどなく溢れる痴蜜が白濁してきてピュッと噴き出した。
「はぁはぁはぁ……まさと……」
弱々しく呟いた香織の体を勝人は抱き上げてソファーの上へ座らせた。香織の鼻腔の勝人の体臭が流れ込んでいく。香織の精神は既に最後の一線を越えてし
まっていた。
浅く腰掛けた香織の両足を勝人はM字に持ち上げて秘裂に顔を近づける。香織は弱々しく息をしながら両手で顔を抑えた。
「恥ずかしいよ……まさと……恥ずかしいよ……恥ずか……あ゛ぁぁぁぁ!!」
ぷっくりと膨らんだ陰核の周りを勝人のざらついた舌が嘗め回している。甘酸っぱい蜜の匂いが勝人を刺激する。
彼女達TSレディの体内分泌物がまともな女とおなじ成分の訳がなかった。勝人の理性もどこかへ吹き飛び、香織を攻める事しか頭になかった。
ざらついた舌は陰核を弄りつつ秘裂の奥を目指した。舌と一緒に指が侵入する。香織の精神は既に限界だった。
一心不乱に攻める勝人の体臭が、香織の中の大事な何かをも一緒に吹き飛ばしてしまった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
獣じみた喘ぎ声が部屋に響く。上下の部屋が空室である事のありがたみを翌日になって香織は実感したのだけど、今はそんな事を感じている余裕がない。
激流となって押し寄せてくる快感の波に翻弄されて、香織の意識は天の川を流れる笹舟のように宙を漂っていた。
執拗に陰核を攻め続けていると香織はもう既に全身どこを触られても快感しか感じない状態になっていた。
体重を預けてある筈の尻周りですらジンジンと快感を伝えている。全身性感帯になっている香織の体が鳥肌状態になっていた。
「香織、いくよ……いい?」
「……うん、きて」
いつの間にかパンツを脱いでいた勝人の、強く硬くいきり立っているペニスが香織の膣口にあてがわれた。
熱を帯びてピクピクと動く勝人自身の動きに香織は反応してしまう。もう自分で何を言っているのかわからなくなり始めている。
勝人は腰を入れてグイッと香織を押し上げた。膣内に太い物が進入してきてミリミリと言う感触が香織の体の中を貫く。
その感触は振動となって背骨を揺らし頭蓋骨の中で反響していた。香織の体内に勝人が入ってきた!
「はあぁぁぁぁぁぁ!! まあさとぉぉぉぉ!!!!」
カクカクと腰を動かす勝人の下で香織もモゾモゾと腰をくねらせる。気持ち良い所を探して、緩やかに波打つ香織の胸にボヨンボヨンと乳房が揺れる。
勝人の腰が強く激しく香織を押し上げそのストロークが長くなりだした。
「あぁっ! ひぎぃ゛! あうぁ! うぅ゛ぁ!」
香織の意識が真っ白な光に包まれて空を舞い始めた。勝人のペニスを受け入れた香織の女である部分が、ギュッギュとうごめいて勝人自身を締め上げている。
子種を残らず搾り出させるための女体が持つ動きだった。
「香織の、中が、凄く……熱いよ……凄く熱いよ!!!」
そういって勝人はリズミカルに腰を振り続けた。
香織の足を持ち上げていた腕が疲れたのかパッと手を離すと、香織の足は勝人の腰に巻きつけられて一番気持ちいい所を探して一緒にゆれていた。
手持ち無沙汰な両手で香りの乳房を揉みしだいている。
「うぅ! ん! んはぁ! ふん! んはぁ……」
勝人の吐息が香織の耳元で響く。いつの間にか香織の体を抱きしめ、勝人も快感の絶頂へ上りつつあった。
「かおり! いくぞ! いくぞ! いくぞ! あぁぁぁ!」
「まさと! 中で出して!」
「かおりぃ!」
「んあぁぁぁあああぁぁぁぁあああ!!!!!」
香織が叫んだ。
香織の胎内でうごめいていた何かがビクッと震えて大量に何かを吐き出した。
潮が引いていくように真っ白の光が香織の心から消えていく。
ピクピクと動く女唇が勝人のペニスから何かを吸い尽くそうとまだ動いていた。
二人とも肩で息をして、余韻に浸っている。
「香織……気持ちよかったよ」
「うん……わたしも……ありがとう」
勝人に抱きしめられて香織は立ち上がった。股間からヌルッとした物が降りそうな感触を感じて香織は手で押さえた。
その仕草がとてもエロティックな物に見えて、勝人は引いていった波が帰ってくるのを感じていた。
「かおり……」
「せっかく貰ったものなのにこぼしたら勿体無いから」
「いつでも好きなだけ注いでやるから心配するなよ」
そういって勝人は笑った。香織もそれを見て笑った。
「ねぇシャワー浴びようよ」
「そうだな」
二人でシャワールームに入って体を流し始めた。熱い湯を被ってお互いの体から何かを綺麗に落としていく。
香織の股間から白濁した勝人の子種がヌルッと流れ落ちた。それを見て香織は呟いた。
「あ〜ぁ、もったいない」
「だから〜、そんなのいつでも……」
「じゃぁ今から!」
「え?」
「私のアシストで2ゴール目ね」
「はっはっは! んじゃハットトリック目指しますか!」
バカみたいに広い風呂場で二人は立ったまま第2ラウンドを始めた。香織の指が勝人のペニスをしごいたらむっくりと起き上がってきた。
今度は香織がひざまずいて勝人のペニスを眺めている。
「ちょっと前まで私にもこれが付いてたのよねぇ〜」
そう言うが速いか香織は勝人のペニスを口に含んだ。太いバナナみたいな感触のものを口いっぱいに感じて、根元まで咥えてから吸いあげた。
僅かに残っていた精液とカウパー液が香織の喉に流れ込む。
ゴクッ!
何かを飲み込んだ音を聞きながら勝人は風呂場の床を足の指で掻き毟った。
「かおり! あぁ! かおり! うっ! うわ! おぉ!」
勝人のペニスを咥えたまま勝人の顔を見上げる香織は笑っていた。その表情がとても幸せそうだったので勝人も幸せを感じていた。
「かおり、ちょっとまった」
「え?」
勝人は湯船のヘリに腰を下ろした。股間にはいきり立ったミサイルがそびえている。
「座ってみ」
「……うん!」
勝人をまたいだ香織は場所を確認しながら腰を下ろす。膣口にペニスが当たって一瞬動きが止まった。
勝人はニヤッとしながら香織が腰を下ろすのを待っている。
「どうした?」
いじわる……そう言いたげな香織の表情がなんともコケティッシュで勝人は楽しかった。
「まさと……」
「どうした?」
「……だめ」
「なにが?」
座っている勝人に香織は上半身を預けて力を抜いた。重力に引っ張られて香織の体が沈んでいく。
「ま……さと……あぁぁ……溶けてくみたい」
「かおり……」
力無く体を預ける姿がいとしくて優しく髪をなで上げる勝人。首に手を回して勝人の耳元で甘い吐息を吐き出す香織。
再び激情の波が押しよせてきて、香織の意識は空高く舞い上がっていった。
「あなたの中に溶けていくみたい……溶かして……私を溶かして」
抱きついたまま香織は自分から腰を振り始めた。されるがままに見ている勝人。
息も絶え絶えに再び絶頂を迎えつつある香織の体をつかんで、勝人は弾き上げるように腰を動かし始めた。
勝人の上で香織の体がポンポンと跳ねる。声にならない声で香織は行きあげていた。
「ああああっぁlっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁああああああ!」
「それ! 2点目! シュート!」
弓なりに反り上がった香織の体がガックリとうなだれる。
一瞬失神しかけて寸前で何とか意識を繋ぎ止めた。香織の胎内に再び熱い粘液の感触があった……
「まさと……」
もう息も絶え絶えになった二人は風呂から出てきた。香織の股間を流れる白濁液は無いようだ。今度は全部注ぎ込まれたのかもしれない。
裸のまま二人はベットルームへを倒れこんだ。大きなベットのありがたみを香織は始めて感じた。
「ねぇ、腕枕してくれる?」
「いいよ。こっち来いよ」
そういって香織は勝人に体を預けて腕の中で眠りに付いた。
香織と勝人の幸せな初体験は形を変えた幼馴染の戯れあいなのだった。
大きな満足感を感じながら深い眠りの底に落ちていく香織。勝人の寝息を感じる事もなく意識はどこかへ消え去った……