「ダメ、ダメえぇ!! 二つ同時なんて壊れちゃ……や、やめてぇぇ!!」
そのおぞましい感覚、これから行われようとしている行為に令は恐怖し、涙を流して懇願する。
しかしそれはかえってタケと黒服の加虐心を煽っただけだった。
黒服はあの路地で会った時の能面のような笑みを浮かべると、そのまま無言で令の中に侵入を開始した。
「はぎぃっ! ふ、太……ダメ、こんなの無理!! やだ、やだ……あ、あああああぁぁ――ッ!!!」
その狭い門に、黒服のペニスは力任せに侵入してくる。
自身の排泄口がめりめりと広げられる痛みとも快楽ともつかない感覚に秘部からの快楽がミックスされ、
そのあまりに異質な感覚に令は涙を流して絶叫した。
もし静奈に後ろを経験させられていなかったら、令はその感覚に心を壊されていたかもしれない。
このあまりに強引な突き込みは、それぐらい容赦というものがまるで感じられないものだった。
皮肉な事に令はこの乱暴な陵辱を受けて初めて、あの時静奈が絶妙な加減の上で、
宝物を扱うような愛撫と技巧で快楽を引出していた事を理解した。
しかし彼らの陵辱は、まず何より自身が楽しむ事を第一としているのである。
相手が感じようが苦しもうが一行に構わない、それはまさに「犯す」という行為だ。
だが……心がそれをどう受け取ろうが、体には関係のない事だった。
二人が同時に動き出した途端、体がその感覚を快楽として認識し、それが一気に爆発する。
「きゃあああぁぅぅッ!! やめっやあぁ、ひいぃうぅっ! こ、こんな……膣(なか)と後ろで擦れて……
やああああぁぁうううぅ――ッ!! だめえぇぇ! そんなに突かないでえぇ!!」
「ひゃっはっはは! 前後は初めてかぁ? 安心しな、もっと激しくしてやるよ!!」
言うがはやいかタケは令の足に手を掛け、そのままM字に開かせた状態で体を持ち上げる。
途端に令は秘部と菊門以外の体の支えを失い、その重さ全てが結合部に集中した。
自らの体重で二人のイチモツがより深く突き刺さり、その耐えられない感覚がさらに体の深い部分に達するようになると、
もう令は声を上げ続けるしかなくなっていまう。
「はあぁん!! ふああぁ……ああぁ! ひゃあああぅぅん! もうや……やだああぁぁぁ!!」
口で何とか拒絶の言葉を発してみるものの、もうそれ自体が意味をなさなくなっていた。
すでに令の声はどうしようもなく甘いものになっており、汗で濡れた肌はその快楽に打ち震えピンク色に染まっている。
体はすでに雄を受け入れる事に悦びを感じ、もう令がそれを拒否しているようには見えないのだ。
令は今、陵辱で快楽を感じている自分が信じられなかった。しかし現実は抱かれているわけではなく、
犯されているのに声を上げて感じてしまっているのだ。
そして雌の体はさらに快楽を求めて、より激しく律動する。
たとえ強要されたにせよ、一度燃え上がらせられてしまった女の体はもう最後の瞬間を迎えるまで暴走して止まらない。
いつしか令は背後から突き入れられた男根の痛みも忘れ、
前後から激しく加えられる刺激に我を忘れて腰を振り、大声で喘いでいた。
全てが悦びと欲望に満たされた状態、意識も理性も快楽に飲まれた悦楽の宴。
しかし……全てが白濁の波に呑まれたはずの令の心の深奥で、最後に残った何かが泣いていた。
雄と雌の交わりは心も体も悦ばすもの、しかしこの快楽は何かが足りない。
違う、違う……−それが必死に違和感を訴えている。
しかしその最後の何かも、この流れ込んでくる大きな悦楽に歯向かう事はできなかった。
砂が崩れるように、その意識すら白い光に呑み込まれつつある。それは絶頂が近い事を意味していた。
「さあて、フィニッシュといくかぁ! 中出ししてぇところだが、孕んじまったら価値が下がるんでな。
代わりにたっぷりその顔面にぶっかけてやっからよぉ!!」
「ふああぁんああぁ!! そん……なのんあああぁ……ひゃうッ! ひいああぁぁッ!!」
「ははは! そんなに嬉しいか! 安心しろ、兄貴の方はしっかり中だからよ!
ケツの穴しっかり締め付けて、お望みのミルクをしっかりと飲みな!!」
「そ、そんなこと言ってひゃああん!! やだ、だめ、ダメ!! もうこんな……あふぅ! ああうぅ!!」
もう言葉すら満足に発する事もできず、令は甘い声に合わせるように体を振るわせる。
すでに絶頂まで引き返せないところまで高まってしまった令の体は、
顔射される事にすら微かな拒否を示すだけで、恐怖する感情すら生まれてこない。
息がどんどん荒くなり、火照った体から汗が流れる。
そして黒服が思いきり腰を突き上げた瞬間、それは頂点に達した。
「はあぁ、あああああああぁああぁぁぁぁ―――――ッ!!!!」
子宮がきゅうと収縮する感覚とともに令は胸を大きく突き出すように腰を反らせ、
全身を激しく振るわせながら絶頂の叫びを上げる。
その瞬間、両胸を左右から掴まれるような感触とともに、何かが胸の谷間に差し込まれた。
何かは言うまでもない。パイズリをするように指し込まれたタケのイチモツは、
令の絶頂に合わせるように自らの精を令の顔に降り注ぐ。
それと同時に自身の腹の中に熱いものが注がれる感覚があった。
体の内と外を同時に汚される感覚……快楽の高まりがようやく頂を超えた体が静かに脱力し、
まだ絶頂の余韻が残る体を震わせながら、そのままぐたりと地面に倒れ込む。
冷たい地面の感覚を肌に感じるようになって、令の意識はようやく雌の本能から開放された。
しかし体にはまるで力が入らない。
全てを絶頂に持っていかれてしまったかのように全身が疲れ切り、へたに気を抜けば意識を失ってしまいそうな状態である。
そんな朦朧とした意識のなか、タケと黒服の声が耳に入ってきた。
「これなら売れるだろう。タケ、すぐに処理しろ。逃がすわけにはいかん」
「へい、ではさっそく……」
−処理……?−
奇妙な単語が気になり、令は今にも消えそうな意識を奮い立たせてゆっくりと体を起こす。
それと同時に右腕をがっしりと押えられる感覚、そして視界に飛び込んできたのは、
その腕に注射器をあてがおうとしているタケの姿だった。
「なっ!……ちょ、ちょっと何だよそれ!」
「こいつはな、ヤるのと同じぐらい気持ち良くなれる薬だよ。
しかも一度味わってしまうと切れた際の禁断症状がメチャクチャ苦しくて、この薬ナシではいられなくなっちまうのさ」
「そ、そんなものをどうして……って、や、やめて! そんなの打っちゃやだぁ!!」
タケがニタニタと笑いながら注射器の針を令の目の前でぶらぶらと振る。
針の先から微かに薬の液体が漏れる様に恐怖を掻き立てられた令は必死に力をこめて腕を振り解こうとするが、
令を押えている黒服の腕はびくともしない。
「商品であるお前に逃げられちゃ困るんでな。
こいつを打ってしまえば、お前は薬欲しさに俺達に従うしかなくなるのさ。さあ、最初の一回をじっくり味わえ……!」
「やだあああぁぁ!!! やめ、やめてぇ! いやだあああぁぁ――――!!!」
その針がゆっくりと令の腕にあてがわれる。
針が微かに触れた感覚に令は恐怖で泣き叫ぶが、それでタケが注射を止めるはずもなかった。
この針が奥に突き刺された時に全てが終わる……しかし令に抵抗する術はなかった。
ちくりとした痛みを肌に感じた瞬間、令は恐怖のあまり硬く目を閉じる。
緊張のあまり呼吸すら止め、その時が来るのを暗闇の中で脅えて待っていた。
だが……”それ”は訪れなかった。
唐突に押え圧し掛かられていた力から開放されたかと思うと、
何かがぶつかる音とともに、蹴られたダチョウのうめきような声が耳に入る。
刹那、全身にぞくりとする感覚が駆け巡り、鳥肌が立つ。
それはまさに冷水をかけられたかのような、今まで生きてて感じた事がない、あまりに異質な”感覚”。
何が起きたのか理解できず、令は恐怖と混乱の中で恐る恐る目を開けた。
令の手元には射される事のなかった注射器が薬のはいったままの状態で転がっている。
しかしそれを行おうとしていたタケの姿がない。
そのまま視線を上げると、正面の壁にもたれるよう座り、ぴくりとも動かないタケと黒服の姿が目に入った。
まだ事態が呑み込めないでいる令……だがその令の横には、先程まで”存在していなかった”者がいた。
「下卑どもが……」
突然自分の真横からの声に令はびくりと体を震わせる。
何故なら先程から感じる異質な”感覚”、それは明らかにその声のした方角から感ずるものだったからだ。
しかしそれは聞いた事がある声、今の令には決して忘れようもない人物のものであった。
静かに視線をそちらに向ける。
黒く長い髪を持つ、漆黒のドレスに身を包んだ女性……セネアの姿がそこにあった。
その赤い瞳が烈火のような怒りを宿して、令を陵辱していた両者を睨んでいる。
それを見て令はようやくこの奇妙な”感覚”の正体を悟った。
これは”殺気”なのだ。
それも人ならざる者の力をもって放出される、生命としての圧倒的な力を持った殺意の流れ。
その対象ではない令ですら、これほどの脅威を感じる殺気……人の身でこれを正面から受けたとしたら、
はたして幾人が正気を保てるのか? そう思わずにはいられないほどの迫力が今のセネアにはあった。
「よくも令を……魂をもって償え!!」
セネアが手をかざした途端、突然タケと黒服がバネ人形のように立ち上がり悲鳴を上げる。
否、立ち上がらせられたのだ。それはあきらかにその生き物の意思による動きではない。
奇妙な”闇”が両者にまとわりついていた。それが動き絡まるごとに、ぎしぎしと体が骨ごと軋む音が令の耳にまで聞えてくる。
「ぐがっ!! ぎゃあああああぁぁぁ!!!」
突然の事態をただ呆然と見つめていた令だったが、タケの体の奥から搾り出されたような悲鳴を聞いて、ようやく我に返った。
目の前で先程まで令を陵辱していた存在が悲鳴を上げ、苦痛にのたうち回っている。
それは令に行った行為の代償、自身の行動が招いた結果なのだ。
これは令にとって望むべき復讐劇の忠実な施行である。しかし……
「セネアさん! 駄目、駄目だよ! 殺しちゃ……殺しちゃダメだ!!」
「令!?」
突然自分の腕にしがみ付いて叫ぶ令に、セネアは驚きを隠せなかった。
「何を言ってるの令!? あいつらは貴方を汚したのではなくて!!?」
「そうだけど……そうだけどダメだよ!! 人を……人を殺すなんて……」
セネアの目が何故だと令に問い掛けていた。彼らを殺したいほど憎いのは、他ならぬ令自身なのではないかと。
それは多分、間違いではない。
だが令はそれでもなおセネアにそれを止めるように懇願した。
「お願いやめて……僕の為に人を殺すなんて……セネアさんが人を殺めるなんて……やめ……て……」
「……令? ちょっと令! どうしたの!!」
意識が少しずつ朦朧としてきた。少しでも声を上げてセネアに懇願しようとするも、体が言う事を聞かない。
体力がもうとっくに限界にきていたのだ。
闇に沈む意識に微かに入ってくるセネアの声を聞きながら、令はそのままセネアの胸に倒れ込んだ。