「ねえ…さん?」
僕は、荒い息を吐き出しながら、何とか言葉をつむぐ。
「うふふ。凄いでしょ、男の子を女の子にする薬よ。実験的にお風呂に混ぜてみたんだけど、効果覿面ね」
姉は、妖艶ともいえる笑みを浮かべながら言った。
両親が死んで2人っきりになってから、ずっと僕を支えてくれた姉。
その姉の、こんな表情を見るのは初めてだった。
「どうして、こんな…」
「あら、作った薬は実験してみなくちゃ効果がわからないでしょ?
それに、今回のは特に、人間の男の子にしか効果がない薬だし。大丈夫よ、ちゃーんと戻れる薬を作ってあげるから」
姉の言葉に、僕は少し安堵した。
いくらなんでも、自分が可愛い女の子だなんていうのは違和感がある。戻れるに越した事は無い。
だけど、そんな僕の気持ちを見透かしたように、姉は続けた。
「いい子にしてたら、ね」
「え…?」
「せっかく可愛い女の子なんだもの。可愛がってあげなきゃ損でしょ?」
「ね、姉さん」
何を言ってるんだろう、この人は。
一瞬、言葉の意味に気付く事を理性が拒絶した。
そして、気付いた時には背後から抱きすくめられていた。
「抵抗しちゃ駄目よ? 薬、作ってあげないからね」
「そ、そんな―ひぁっ!?」
耳元でささやくそんな言葉にも、さっきの余韻で火照ったままの僕の体は、敏感に反応してしまう。
「うふっ。さっき一回イッたから、感じやすくなってるでしょう?」
「姉さん、もうやめてくれっ」
恐かった。
さっき自分をなぐさめた時の、自分が本当に心まで女の子になったような感覚が。
あれ以上に感じてしまったら、もう戻れなくなってしまうような気がした。
「あら、嫌なの? でも、こっちはそうは言ってないみたいだけど?」
けど、姉さんはそんな僕の考えなんてお構いなしに、腕の中の華奢な体を弄りまわす。
「あぁ…んふぅ…や、やだって…」
「ほら、ここはもうこんなに濡れてるくせに」
くちゅ、くちゅ、と音を立てて指を操る。
「ひぁ…くぁう…ぁぁ…んふぅ…っぅあぁ……ぃやぁ」
太ももをつたって、足首のあたりまで汗ではない液体が垂れ落ちる。
膝ががくがくするけど、倒れることも許されない。
「ほら、見なさい。自分のいやらしい姿を」
僕はあごを持ち上げられて、目をそむけていた姿身を見せられた。
そこには、妖艶な女性に抱きすくめられながら快感に翻弄される、繊細な美少女の…僕の姿が映っていた。
「これが今の祐ちゃんよ。ふふ、いやらしい女の子でしょ?
処女の癖にこんなに濡らして、可愛らしい胸もこんなに尖らせちゃって」
「ぁくぅっ!」
鏡の中の姉が少女の乳首をつまみ上げると、その腕の中で少女が跳ね上がり、僕は喘いだ。
体の中の火が、だんだん強くなっていく。その熱が、思考を霞ませる。
もう、体が言う事を聞かない。
声すらも、自由にならない。
僕が女の子になった証とも言える、繊細で、悲痛で、気が狂いそうなほど淫らな喘ぎ声を、堪える事が出来ない。
それでも、僕は男であった感覚を捨てきれず、鏡の中の少女の媚態も、喘ぎ声も、すべてが他人事のように感じていた。
だから僕は全てを姉に身を任せて、思考するのを止めた。
「ふぁっ…あ、ぁあ…ひぁんっ……ぃあ…ひっ、ぁ、ぁ……」
「あら、素直になったのね。でも、駄目よ、自分から逃げちゃ」
姉は、全てを見透かすような目で僕を抱きしめると、さらに激しい攻めを始めた。
ささやかな、硝子細工のような少女の体を、姉の指先は容赦なく蹂躙していく。
僕の正面のその少女は、目元を快楽によって真っ赤に染めて、ただの快楽人形と成り果てて、
今まで到達した事のない高みに押し上げられようとしていた。
あと一押しで、全てが終わるはずだった。
けど、姉さんはその瞬間に全ての動きを止めて、僕から離れた。
「…ぇ…?」
突然支えがなくなって、力の抜けきっていた体が崩れ、床に膝をついた。
その衝撃で溢れ出した液体が床にシミを作り、広がっていく。
僕は、ぼぅっとする頭をめぐらせて、姉さんの方を振り返った。
停止したはずの思考が、再び動き出す。
ナゼ、ツヅキヲシテクレナインダロウ。
違う。
ハヤクイキタイノニ。
違う…。
アトスコシダケダッタノニ。
違う…ちがう…。
「うふふ。そんなに物欲しそうにして…でも駄目よ。
今祐ちゃんは、感じてる女の子は自分じゃないって思い込もうとしたでしょ。そういうズルイ子は、イかせてあげない」
嫣然と微笑む姉は、本当に楽しそうにそう言った。
「…っん…」
ただ呆然とその声を聞いていた僕は、ふと下半身に生じた快感に身を震わせた。
僕の両腕が、別の生き物のように蠢いて、秘所を弄っていた。
キモチヨクナリタイ。
キモチヨクナリタイ。
キモチヨクナリタイ。
頭の中が動物的な感覚で満たされていく。
「あらあら、我慢できなくなっちゃったのね。ホント、いやらしい娘ね。
でも、それも駄目。それじゃあ本当に気持ちよくはなれないわよ? だから、オアズケ」
「くぁんっ…な、ぁに!?」
僕は姉さんに両腕をバスタオルで縛り上げられて、タオルかけに縛り付けられてしまった。
丁度両手は万歳するような形で、体はその下の壁にもたれかかってしりもちをついて座り込んだ。
ぴぃん。姉さんの指が、僕の胸の先端を弾く。
「ひあっ!」
それだけで、全身をしびれるような快感が駆け抜ける。
「可愛い胸。苛めたくなっちゃう」
ぴん、ぴんぴぃん。ぴん。ぴんぴんぴぃん。連続して、不規則に続けられる感覚。
「ぁっ…んぁっ…ふぁぁっ…ひぁっ…」
キモチイイケド、タリナイ。
さっきまで全身を満たしていた燃えるような感覚に比べれば、それは随分と物足りなかった。
そう感じた瞬間。
ぴぃん!!今度は、秘所の尖りを弾かれた。
電撃にも似た感覚が、僕の体を満たす。
キモチイイ。
コレガイイ。
「ふふふ。こっちはお気に入りみたいね。そんなにとろけた顔して」
「ひぃん!…あ、ぁああっ、くぅんっ!!」
そして姉さんは、完全に顔を出したその尖りをつまむと、上下に擦り上げ始めた。
「…ぃ!!…ぁぁ…!! ーっ!!!」
目の前に火花が散っている。
体は不自由な状態から何度も何度も跳ね上がって、まともに息も出来ない。
声にならない喘ぎが漏れる。
そして、また高みへと到ろうとする瞬間。
「ふふ、オアズケ」
「ぁぁ…そんな…」
あと少しで、最高の快楽が手に入るという瞬間に止められた僕は、思わずそんな事を口走ってしまった。
「そんな、なに?」
姉は、相変わらず微笑みながら、僕の口元に耳を寄せる。
だけど、言える訳がない。
イかせて欲しいだなんて。
イカセテホシイノニ。
「あら、まだがんばるのね。しかたないわね、そんなに嫌なら、やめてあげる。でもその前に、その汗拭いてあげるね」
にっこりと微笑んだ姉は、僕の体をタオルで拭き始めた。
「…っん!」
タオルが、僕の胸の先端を掠めていく。
限界近くまで焦らされて、敏感になった体は、たったそれだけの刺激にも反応してしまう。
「ああ、ごめんね、うっかり手が滑っちゃったわ。あ、そうそう、ここもびしょびしょだから、拭いてあげるね」
「ぁ…っ…ぁぁっ…ぃ…ぁっ…―っ!!」
僕の秘所は、タオルでごしごしと刺激されて…。
「駄目ね。きりがないわ。拭いてもすぐにまた濡れちゃうし」
姉は唐突に、タオルを投げ出した。
また、絶頂の直前で投げ出された。
モットシテホシカッタ。
もっとして欲しかった。
我慢できなかった。
理性も、矜持も、プライドも、頭の中から消え去った。
「もっと…して…」
もう、止らなかった。
「うふふ、何を?」
満面の笑みを浮かべて、姉は問う。
「いやらしいこと、気持ちいいこと…」
「そう。じゃあ、イかせてあげる。嫌って言うほど、ね」
そう言った姉の表情は、契約に成功した悪魔みたいに見えた。
「でも、さんざん待たせた罰よ。最初はこれでイきなさい」
「ぁぁっ、そ、そんな…ぁのっ…ぃ、ぃあぁっ!」
僕の股間は、姉の足に蹂躙されていた。
爪で過敏な先端を突きながら、足でぐりぐりと踏みつける。
完全に快楽に溺れた僕は、そんな屈辱的な行為でも、気持ちよければ何でも良かった。
「ホントに足でよがっちゃうなんて、祐ちゃんってマゾっ気もあったのね」
僕を貶める姉の言葉も、今は気にならない。
「んぁぁっ!くぅんっ!も、もう…っ!!」
「イきなさい、祐ちゃん」
「んぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
とどめとばかりに尖りを足で捻られた僕は、全身を震わせながら、真っ白な世界へと沈んでいった。