「・・・ちっ」
京介は舌打ちしながら目線を右へそらす。教室の中、HRの前で騒がしい生徒達の間に誰も座って居ない席が目に入る。
「ふん」
面白くなさそうに窓の外へと目線を移す。
しばらくして黒板の上のスピーカーからチャイムが流れ、教師の扉を開ける音と自分の席へ戻っていく生徒達のざわめきを聞きながら、
京介はまた一つ『ふん』と鼻を鳴らした。
結局、この日一日空いている席の生徒は姿をみせなかった。
「くそっ、めんどくせーな」
京介のアパートから20分ほど離れた住宅街の一角の2階建ての家。
周りの家とさほど違いがなく空いた敷地に申し訳程度に作られた庭がある。表札に『早乙女』と書かれたその家を不機嫌そうに京介が見る。
『ちっ』と舌打ちをするとチャイムを押すと数秒後、インターフォンからザッと一瞬ノイズが走る。
『はい、どちら様?』
「高橋です。早乙女君いますか?」
『あ、京介君? ちょっとまってね』
インターフォンから流れる女性の声が途切れると、玄関のドアの向こうからドタドタとくぐもった足音が聞こえてくる。
ドアノブがガチャガチャと音を立てドアの向こうから人のよさそうな中年の女性が顔を出す。
どこかへ出かけるのか顔には化粧の後と、少し慌てている様子が見て取れる。
「京介君いらっしゃい。ごめんなさい、輝、風邪を引いたらしくて部屋から出てこないのよ」
「ええ、そう思ってお見舞いにきました」
京介は前もって作っておいた優等生の顔に人懐っこい笑顔を浮かべる、と左手に持つコンビニの袋を持ち上げる。
「あら、わざわざありがとう。輝も喜ぶわ」
輝の母親は息子の友人がわざわざ見舞いに来てくれたと言う状況に純粋に笑顔になると京介を家に向かえ入れる。
「ごめんなさいね、私急に仕事が入っちゃってこれから出かけなきゃいけないの。輝は部屋に居るから行ってあげて」
「はい、そうさせていただきます。あ、鍵は僕が閉めておきますよ」
バタバタと出かける準備をする輝の母親に京介はにっこりと笑射掛ける。
「本当に京介君はしっかりしてるわね。家の輝に見習わせたいくらいだわ」
輝の母親は息子の良い『友人』に微笑むとヒールを履き「それじゃお願いね」と出かけていった。
京介はその後姿にヒラヒラと手を振りドアに鍵を掛ける。
「能天気なババァだぜ。イライラする」
ぺっと玄関に唾を吐くと乱暴に靴を脱ぎ2階へ続く階段を睨みつける。
「さて、自分の立場をちったぁ理解させてやらねーとなぁ」
京介は口の端を醜く歪めると、教科書の入った鞄を玄関の脇に投げ捨て、階段の先にある輝の部屋へと向かった。
「・・・・・・ううぅ」
輝は布団の中に縮こまり嗚咽を漏らしている。輝の両親は共働きだった為昨日家に帰りついた時は輝以外誰も居なかった。
呆然としながらも習慣からか寝巻きに着替えようとした時、自分の足の付け根から垂れて来た京介の精液に麻痺していた心が元に戻り、輝は崩れ落ちた。
それから輝は部屋に閉じ篭り一晩泣き続けた。
男の面影を残しつつも、完全に女になってしまった自分の身体を両手で抱きしめ、
真っ白な頭の中に沸き上ってくる悲しみに押しつぶされそうになるのを泣きながら耐えた。
朝になり、起きてこない輝を心配した母親に嘘をつき、今の自分を見られないように部屋に入ってくることだけは頑なに拒んだ。
心配した母親はパートを休んでくれたらしい。その事に罪悪感を感じつつも彼は何も考える事ができなかった。
しばらくして、輝の母親はどうしても仕事に行かねばならなくなったらしく、夕飯は作ってあるのでちゃんと食べるようにと告げると出て行った。
その前に誰か来たような気もしたが、今の彼は周りの事を深く考える余裕がなかった。
そんな中で、誰も居ないはずの家を、自分の部屋へ続く階段を上ってくる足音に気づき、輝は言いようのない恐怖にかられた。
鍵を掛けてあるはずの部屋のドアがカチャカチャと音を立て、開く。
「よーう輝、何鍵なんか閉めてんだ? ええ?」
「きょ、京介・・・君」
輝の心臓がどうしようもないくらいドクンっと一つ跳ねる。そこには、いつも自分を殴る前のあの嬉しそうな顔をした京介が立っていた。
右手には何かのカードのようなものがヒラヒラと揺れている。
「ど、どうして・・・」
「お前の部屋のしょぼい鍵なんて簡単に開けられるんだよバーカ。それよりもてめぇ、誰に断って休んでんだ、あ?」
「ひっ・・・ご、ごめんなさい」
京介は左手に持っていたコンビニの袋を輝に投げつけるとベットへと近づく。
「何様なんだよてめぇ、おらっ!」
「げっ!・・・けふっ・・・」
京介の視線にビクッと身を竦めた輝の腹部を思い切り蹴りつけると、髪の毛を乱暴に掴み上を向かせる。
泣き続けて赤く腫れた双眸から新たに大粒の涙がこぼれる。
「お前全部ばらしてやろうか? 早乙女輝は女でしたって学校中に言いふらしてやろうか? あ!?」
「ご、ごめんなさい・・・許してください・・・それだけは止めてください・・・うぅっ」
京介は輝の事を誰かに言うつもりはさらさらない。そこから自分の事がバレてしまったら彼としてもまずい立場になる。
だが、学校を休み、自分の親にさえ言った様子のない輝にカマをかけたのだ。
「お前は俺の言うことだけきいてりゃいいんだよ。バカが。明日からちゃんと、何事もなかったように学校に来い。
誰かにバレるようなヘマしやがったらホントにぶっ殺すからな」
「そ、そんな・・・そんなのどうしたら・・・あうっ!」
髪を掴んでいる手を捻り上げられ輝の顔が苦痛に歪む。
「そんなの俺が知るわけねーだろうがバーカ。お前が考えるんだよ」
「うぅ・・・うぅぅ」
掴んでいた髪の毛を離すと京介の口の端が醜く歪む。
「おら、わかったかって聞いてんだよのろま!」
「ひっ・・・は、はい・・・」
京介がガンッとベットを蹴ると輝の身体が条件反射のように竦む。京介はそんな輝を満足そうに見ると、部屋にあるイスを引き寄せ乱暴に座る。
「さて、俺にここまで迷惑かけたんだ。どうしたらいいかわかるよな?」
「・・・え? あ、あの・・・ひぃっ」
「脱げっつってんだよ!早くしろバカ!」
京介がさらにベットを蹴りつけると輝は諦めたようにゆっくりと服を脱いでいく。
元々寝巻きだけの姿だったため時間を掛けたところですぐに一糸纏わぬ裸体を京介の前にさらけ出す。
ベットの上に膝立ちの状態で胸の先端と股間を左右の手で恥らうように隠している。
「何隠してんだよ! 腕どけろ!」
「うっ・・・ぐすっ・・・はい・・・」
顔を真っ赤にしながら両手を離す輝を京介はニヤニヤと見る。
「あ、あの・・・これからどうすれば・・・」
「ふんっ、つくづくエロいからだしやがって」
「あっ、ちょっとま・・・うぁっ!」
京介はイスから立ち上がると輝をベットに押し倒す。
「ま、まってっ・・・京介君・・・ひあっ!」
胸を掴まれ輝は声を上げる。昨日の強引なそれと違いゆるくこねるような手つきに輝の背筋がぶるっと震える。
「へっ、感じてやがる。ホントに女みたいだな。気持ち悪りぃ奴だ」
「うぁっ・・・んくぅ・・・」
京介の両手が輝の胸をこね、指の間で乳首をはさむようにこする。
すると輝は自分の意思と無関係に上がる声をこらえるように片手で口を抑えベットのシーツをきつく握る。
そんな輝を見て京介の顔は邪悪な喜びに歪み、乳首を口に含み舌先で転がす。
「あくっ・・・ふあぁっ!」
初めて湧き上がる快感にこらえ切れなくなった嬌声が上がり背中が反り返る。差し出されるように突き出された胸に京介がむしゃぶりつく。
「お、なんだ濡れてんじゃねーか。この変態が。ははっ」
「あっ・・・ダメ、京介君やめてぇ・・・あうんっ!」
京介が片手を秘唇へ伸ばすとそこは十分に潤い、京介の指を苦もなく飲み込んでいく。そこを指の腹で摩り、指に絡むビラビラをつまんで擦る。
すると輝の身体は面白いように跳ね、隠す事すらできなくなった嬌声が輝の口から上がる。
輝の身体を責めていた手が離れると輝は荒い息をつき、脱力する。
そんな輝を京介は満足そうに見下ろすとチャックを下げ、いきり立ったペニスを取り出すと輝の秘唇にあてがう。
「おら、いくぞ。せいぜいよがれや」
「あ・・・・・・京介君だめ・・・ひぅっ」
にゅるっと京介の亀頭がもぐり込み、その感覚にぞくぞくと強い快感と、それと同じくらい強い異物感と嫌悪感が輝の背筋を伝い、頭の先まで駆けていく。
「ぐっ・・・本物の女より締め付けが言いなんて笑えるなぁ、ええおい」
「あ・・・あぁ・・・・・・」
京介が腰を進めると決して小さくないペニスはあっさりと根元までが埋まり込む。
京介は膝を輝の両脇へと入れ込むと、その腰を抱かかえるように持ち上げ腰を容赦なく叩きつける。
「あぁぅっ! ひぁっんあぁぁっ!!」
強制的に送られてくる快感に、輝は全身をつっぱらせると頭を左右に振り一段と大きく声を上げる。
結合部からはじゅぷじゅぷと粘っこい水音が響き、溢れ出た蜜がベットに大きな染みを作る。
自分の膣内を擦られ、抉られ、貫かれる度に輝の中にどうしようもない切ない気持ちが湧き上がってくる。
その気持ちに恐怖を感じ、輝は自分の上で揺れている京介に無意識に抱きつく。
「ぐ・・・うぅっ・・・」
「あっあっふあっああぁっ!」
京介も考えることすら億劫になるような快感に自分が抱きつかれているという事すら分からずにただ腰を振り続ける。
そのうち、京介の腰の後ろにじんっと痺れるような感覚が生まれ、強い圧力を持った精液が尿道お迫上がってくる。
「いくぞっ・・・!」
「やっ・・・だめっ、京介君怖い・・・うあぁっ!」
最後に、京介はこれでもかと腰を叩きつけると輝の奥でそれを爆発させた。
「ひあああぁぁぁぁぁっ!!」
輝も自分の中で、何かが弾けるのを感じ、意識を飛ばした。
「・・・・・・あ」
一瞬、自分が何所に居るのかわからなかった。まどろみから醒めると部屋には自分しか居なかった。
ベットの上は行為の後そのままに、自分も裸のまま転がっている。
ベットの周りには京介が使ったのかティッシュが数個、クシャクシャに丸められ転がっている。
時計を見る。時間は夜の7時。両親はまだ帰ってきていないようだ。
「うぅ・・・うううぅぅぅぅ・・・」
輝はどうしようもなく悲しくなり、また涙を流した。
だが、悲しみにつぶされそうな自分とは別に、どうしたら周りに知られずに生活ができるか冷静に考えだしている自分が居ることに輝は気づかなかった。