悠司は茫然となって、しばらくの間立ち尽くしていた。
やがて下半身が冷え、くしゃみをしてしまってから、ようやく我に返って鏡の前からよろよろと後退りした。
古いが独立している風呂場に行き、バスタオルを手に取った。
恐る恐る下半身を見てみると、筋肉質とはいえないまでもそれなりに引き締まっていた脚は、
ふっくらとしたやわらかそうな形へと変化していた。色白の肌に、スネ毛がまとわりついているのがおかしかった。
試しに脚をバスタオルでこすってみると、ムダ毛は抵抗なくスルリと拭き取られてしまった。
脚をこすっていると、胸がぶらぶらと揺れてじゃまだった。
しかしその一方で、乳首がTシャツの布地に擦れて固くなりはじめていた。未知の快感に戸惑いながら、悠司は後始末を続ける。
次は失禁の後始末だ。
自分の体は後にしようと逃げをうち、悠司はぞうきんで床を拭き始めた。
だが、アンモニア臭はしない。思っていたよりも量は少なかったらしい。
そこで悠司は、あることに思い当たって背筋をぞっとさせた。
まさか……そんなことってあるのだろうか?
下半身をもう一度、勇気を奮って覗いてみる。
割と毛深い方の悠司の下腹部は、先程見た時と大して変わっていないように見える。
彼はそおっと、へそから下の方に向かってバスタオルで拭き取ってみた。
足の時と同じように、バスタオルにムダ毛がまとわりついてふっくらとした股間のふくらみがあらわになってゆく。
次の瞬間、股間から鋭い刺激が走り、彼は思わず腰を引いてしまった。
ゆっくりとバスタオルを取り去ると、股間とバスタオルの間に糸のような物が走っているのがわかった。
ビデオやエロゲーでは良く見る光景だが、現実には一度も見たことがない愛液のブリッジだとわかって、悠司は愕然となった。
逆V字に脚を大きく開いて股間を覗いて見る。
そこはもう、完全に女性の形状へと変化してしまっていた。
薄いヘアーに、ふっくらと盛り上がった股間から顔を覗かせる珊瑚色の陰唇。
男には有り得ないその器官から確かに、ぬめる液体が漏れていた。
悠司は今度こそ身体中の力が抜けて、床にへたり込んでしまった。
何でこんな事になってしまったのだろう。
そこで悠司は、さっきの警告メッセージを思い出した。
報い、だったか? これがその報いなのか?
続けて、ゲームと称された謎のファイルに入力したことも思い出した。
まさか。
そんなことってあるのだろうか?
なにもかもが、先程入力した項目にぴったりと合致していた。
長い黒髪の美少女。少し近眼で、おっとりとした性格の金持ちの娘。
その先は……?
半ばパニックに陥った悠司の意思とは裏腹に、不意に体が動き始めた。
え? と思う間もなく体は勝手に動き、Tシャツを脱いで全裸になってしまった。そのまま風呂場へと歩いてゆく。
そして換気の窓を全開にして、シャワーを浴び始めた。
「ふーん、ふふふーん、るる〜ん♪」
ぷくっと突き出たバストは、手の中に収まりきらない大きさだ。
やや下に自然に垂れてはいるが、グラビアアイドルでもこんなきれいな形のバストには、そうそうお目にかかれないだろう。
呆然とする悠司の思考をよそに、体は勝手に動いて身を清めてゆく。
タオルを手にとってせっけんをつけ、体を拭き始めた時、触れた所から痺れるような疼きが全身を駆け巡った。
「ああんっ!」
ピンク色の声と表現するのがぴったりの甘えた声が風呂場に響く。
このアパートは壁が薄く、隣の部屋の声どころか、ちょっと大きな声を出せばアパート中に
声が響き渡ってしまうようなオンボロなのだ。そんな所に住むのは、金の無い学生くらいだ。
幸い、3分の2は空室だが、残りにはどれも女には永遠に縁の無さそうな学生が住んでいる。
もちろん悠司もその例に漏れない。
悠司の焦りを裏付けるように、窓枠がみしりと音を立てた。
ヤバい……最高にヤバい!
横目でちらりとその方を伺うと、一人の男が窓枠に顔を押し付けるようにして中を覗いているのが見えた。
だが、悠司の体(なのかどうかも既にわからないのだが)を勝手に動かしている得体の知れない何かは、
覗き見をしている男を知りつつ、いや、だからこそ余計に、扇情的に、いやらしい手付きで体を洗い始めた。
「あん! 乳首が固くなってきちゃったぁ」
横目で窓の方を見ながら、両手を使ってまるで乳牛の乳を絞るような手付きで、手から溢れんばかりのバストを絞りあげる。
乳首をつまんで、指でいじりまわす。胸を押し付けるようにして餅みたいにこねる。
頭の中に炭酸が弾けたような快感が満ち溢れ、全身に広がってゆく。
続け様に声が漏れる。
しばらくして、ようやく手が止まった。
「ねえ……入って来ませんか?」
悠司の体を操っている者は、勝手に窓の外に向かって話しかけた。
冗談じゃない。こんな格好をして男を誘ったとなれば、犯されても文句が言えない。男になんか犯されるつもりはない。
窓の外の気配は戸惑っていたようだが、しばらくして足音が遠ざかっていった。
ほっとする間もなく、彼の部屋の扉を叩く音がした。
またもや体は悠司の思いを無視して勝手に動き、寸足らずのバスタオルを胸に巻き付けると、
さっさとドアの方に行き扉を開けてしまった。