「胸ばっかり吸っちゃ……ダメ、だって……」
明は執拗なまでに胸を攻めてきた。ブラジャーは半端にはずされ、スウェットと一緒に胸に引っ掛ける形でまくりあげられていた。
先端を転がすように舐められ、赤ちゃんが母乳を飲むみたいに音を立てて吸われる。吸われると胸の中からじんじんと痺れた。
もうひとつの胸には手が当てられ、そのなかで胸が目まぐるしく形を変えている。指の間で先端を挟まれる。
「ひうっ! ほんと、あっ、胸は……」
「陽はおっぱいが弱いんだな」
それはもうとっくに看破されて。だからこうやって脱がす手間も惜しんで責められている。
胸を責めると同時に、明は口付けの雨を降らせた。強く吸われたところが虫さされのように赤くなった。
「も、もう、そこは、やめ……」
もう何分胸をいじられているだろう。断続的な激しい快感に身体が揺さぶられる。
明の唾液でぬらぬら光る胸。先端だけでも甘く噛まれ、舌で転がされ……胸だけで達してしまいそうだった。
その寸前を知っているかのようなタイミングで明は胸への責めをとめる。
「おっぱい以外にもやってほしい?」
このタイミングこの質問。絶対わざとだ。ぼくが否定ができないとわかっていて、意地悪でやっている。
小さく頷くのがこの意地悪に対抗できるぼくの精一杯の意思表示だった。
明の右手がおしりと太ももを経由してスカートの中に伸びる。条件反射のように身体がはねた。
ショーツの感触を確かめるようにあて布をさする。ぼくのアソコはそれを敏感に感じとっていた。スイッチのように触られると電気が流れる。
「外からでもわかるくらい湿ってるぞ。すごく感じてたんだな」
ショーツに手がかかる。脱がそうとしている──!
はっきりと見られるのには抵抗がある。
けど、もっと触ってほしい。
ショーツを脱がされて、自然内寄りになっていた股を開かれ、アソコが明の目に晒されて、勝ったのはやっぱり後者だった。
「本当に、女になったんだな……」
ぽつりと明が呟いた。残念そうにも、ほっとしたようにもとれる曖昧な呟き。
その女の証左に、あろうことか明は口を近づけた。
「あき、らぁ……そんなトコ、舐めないで……」
 割れ目をやわらかくて生暖かい舌が這う。
(明が、ぼくのを、舐めてる)
信じられなかった。でも現実は、明は直接口をつけてにじみでる愛液を吸い取ろうとしている。明が、あの明が──
「ダメだって……汚い、からぁ」
「そんなことないって。陽のココ、すっごく綺麗だぞ?」
「そんな、こと、言わな……ひゃあっ!」
ずずっとジュースを飲むみたいに愛液を啜られる。舌が割って入り、中をほぐすようにえぐられる。
「ダメ、だよ明……そんなことしちゃ……ああっ!」
半端につむがれる言葉は否定を表しながら、実際には意味をともなっていなかった。
……ぼくは、次を望んでいるのだから。
「陽……そろそろいいか?」
ファスナーから取り出されたいきり立った明のモノ。大きい。本当にあんなのがぼくの中に入るのだろうか。
怖い。
ぼくの怯えを見透かしたように明が頭を撫でてくる。不思議と恐怖心が引いていった。
「……うん」
丸太のように太いのが、ゆっくり確かめるように入り口を押し広げながら入ってきた。
「うあ……ああああぁぁぁ!!」
あまりの圧迫感に手を突いていたシートに爪を立てる。このまま無制限に後ろにさがってしまうように思えて、指に力がこもる。
指先だけで身体を支えているような感覚。
ゆるやかに明のが根元まで埋まる。でも、まだ明は前に進もうとしていた。結果シートの背もたれに押し付けられる格好になる。
「──っきら、それ以上、はいらなっ……!」
声も絶え絶えに訴えると、それで我に返ったのか前進をやめてくれた。
「──あ、すまん。……あんまり気持ちがよかったからさ」
「平気だよ、明。ちょっと苦しかっただけだから」
心配そうに顔をのぞきこむ明に精一杯の笑顔を見せた。
たっぷりの愛液で濡れたぼくのアソコは明のモノを完全に受け入れていた。
(ぼく、明と繋がってるんだ……)
親友だった明に身体を許している。こんな関係になるために今日ここにきたわけじゃない。
──けど、明は気持ちいいと言ってくれている。それだけで許してしまいそうになる。
「あっ、はっ、あんっ」
さっきまでの胸への攻めで散々高められていたぼくは、数回の出し入れだけでもう上り詰めようとしていた。
感覚器官が快楽だけを受容しているかのように、いまはそれだけしか感じられない。
ぼくの腰を支点に細かくモノが出入りする。それにあわせぼくの胸も揺れる。ぼくの──女の胸。
その胸を明が掴む。明の手の感触と体温が伝わってくる。人差し指で先端を引っかかれた。
身体が強く反応した。アソコが収縮する。
お腹の中が満たされていた。そのためにある器官を強く感じる。自分が女だということを頭以外のところで理解する。
同時にぼくが、まだどこか男として、第三者的な視点で自分を見ていることに気づいた。
けど、女としてこの行為を見たらどうなるだろう。
身体だけではなく、心までも女として感じたら──
「ひゃ、あああああぁぁぁぁ!!」
感覚が爆発した。絶頂を迎えたのかと思った。けどまだ達していない。なのに、そう錯覚してしまうほど──気持ちがいい。
「あああん! んんっ、くぅっ、うああ」
波状の快感が幾重にも広がって、ぼくをあふれさせた。
男に抱かれていると思い、女として感じていると、こんなにも気持ちがいいなんて。
胸もアソコも完全に身体の一部として見なしたことで、ダイレクトに快楽が脳に焼き付けられる。
「あきら、ぼく、もう……なにかくるっ…!」
「そういうときは普通イクって言うんだぞ。女の子だったらみんなそうだ」
「そう、なの?」
女の子なら──だったら、ぼくはそうすべきだ。
「いっ、イクううううう!!!!」
すべてがホワイトアウトして、例えようのない快感が全身を駆け巡った。弓なりにのけぞり思考回路が断線する。
「はぁ……はぁ……」
ぼくは前後不覚になるくらいイってしまった。でも、まだ繋がったままなのに、あの熱いのがお腹に広がるような感じはしなかった。
「あ、きら……イって、ないの…?」
「陽がイクのが早かったからな」
引き抜かれる。その衝撃でまたひとつ大きな波紋が生まれ、身体を震わせた。
余韻で動けないぼくとは対照的に、明はモノを元の場所に戻し、反対側のシートに腰掛けていた。あっさりしていて冷淡に見える。
もう残り4分の1を切っていた。
数分もしないうちに係員さんの手によってこの扉が開けられる。そうしたら今日は終わりだ。降りたらすぐに家に帰ることになっている。
それではダメだ。
「……ねえ、明」
ここままでは終われない。ぼくだけがイって、それで終われるわけがない。明にもイってもらわないと。
今日は、明に楽しんでもらうと決めていたのだから。
「……もう1周……いい?」
いくら接待はするなと言われても、明が不満足なまま終わらせたくなかった。
……ぼくができることといえばもうこれくらいしかない。
「しょうがねえな」
そんなぼくのワガママにも、明は付き合ってくれた。

「お、おい、陽!」
できることならぼく自身の手で満足してもらいたい。そんな気持ちからファスナーを下げ、明のモノを露出させる。
萎えていたそれに、ぼくは躊躇なく手を差し伸べる。
ぼくの愛液に濡れていたのをそのままにしていたらしく、てかっていた。これがさっきまでぼくの中に入っていたかと思うと……変な感じがする。
自分以外のモノの感触。太くて固くて、すごく熱い。両手でゆっくりと上下に動かす。すぐにそれは硬くなっていく。強くこすると脈打った。
男の匂いがした。
忘れていた。数日前まで自分が持っていた匂いさえ忘却のかなたに追いやっていた。
屹立したその先端に軽くキスをする。
「な、なにをやってんだよ!」
「さっき明もぼくのを舐めたでしょ? そのお返し」
女として行動するならどうするだろうと考えた結果だった。
といってもやり方なんて知らない。ただアイスクリームを舐めるみたいに先の部分だけ口に含んだり、舐めるだけだ。それでも明はそれを大きくさせる。
単純なことしかやってないのに、時折切なそうな声を出す。先からぬめった液体が出てきた。
(感じてくれてるんだ)
そのぬめりを取ろうとしていると、いきなり顔を引き剥がされた。
「イクときは陽のなかで……、いいか?」
着せ替え人形のようになすがまま一度整えた服を脱がされる。靴までもその対象にされ、生まれたままの姿にさせられる。
「じゃあ、シートに手をついてお尻をこっちに向けてくれよ」
明のリクエストに応じて、その格好をとる。足の裏が冷たい。けどそれはすぐに気にならなくなる。別のことで頭がいっぱいになったからだ。
「や……こんな、かっこ、恥ずかしい……」
自分でやっておきながら、見られているのに心が拒否反応を示す。
こんなところで全裸になって、ぼくの恥ずかしいところを全部さらけだしている。アソコもお尻も。
自分でさえまともに見たことのない部分を見られている──!
「また濡れてきたぞ。もしかして興奮してる?」
でも興奮していた。音がまわりに聞こえそうなほど心臓が強く拍動していた。
見られているだけで達してしまいそうだった。膝は震え、何かあればすぐに砕けてもおかしくない。
──こんな格好をしていても、入れられることを望んでいる。

頷くと、明のが入ってきた。
「あふぅぅっ!」
1回突かれただけなのに、ちょっとイってしまった。
「あれ、もうイったのか。ひくひく絡み付いてきてるぞ」
イってしまったせいで足に力が入らない。明が腰を持って支えてくれなければ、いまの格好を維持することもできない。それなのに明は動きだす。
「あああっ、ダメ! そんなことしたら……!」
感度が違った。イったことでリミッターがはずれてしまったかのようにそこから広がる刺激は度を越して強い。受容しきれない波が押し寄せる。
「こうしてると本当の女みたいだな。よがりかたとか」
「そんなの、わからない……」
本物の女の人がこんなときにどんな声を出しているかなんて知らない。ぼくだって考えて言ってないのだ。
「女の素質があるってことかな」
たった数日でここまで女に馴染んでいるぼく。環境のせいもあるだろう。でもそれ以上に思い当たる節は見つからない。外からの要因がなければ……そうなんだ ろう。
大きな動きで突かれる。入り口から奥まで一気に貫かれる。正面からとは違うところがこすれて、新しい刺激に身体が震える。
「あうっ……はぁっ……あ……」
明の動きは規則性がなかった。円を描くようにかき回されたと思ったら、入り口付近だけに挿入したり、間隔を早めたり……。まるでぼくの弱点を探っているみ たいだった。
背中に体重がかかって体勢が崩されシートに突っ伏す。明が覆いかぶさっていた。脇の下から手が伸びてきて、また胸を責められる。
「ふあぁぁっ、そんな、いっぺんに、やっちゃ……!」
上からの快感と下からの快感。上も下もこね回される。平行して首すじに、背すじに、頬に、舌が走る。
もうどんなことをされても、高まる要因になる。明が触れるところ、すべてが気持ちいい。
「体勢変えるぞ」
シートの上にごろんと横たえられる。明がシートに片膝をついて、ぼくの左足を自分の右肩に乗せる。その状態で突き入れてきた。
「明ぁ、それ、深いよぉ!」
角度が変わって、前以上に強く奥に突き刺さる。深いところが押し上げられてる!
脳髄に直接響くような衝撃が二度三度と連続する。
「か……は……! ふか……すぎっ……!」
呼吸も言葉も絶え絶えになる。それは痛みだったかもしれない。けど、同時にいじられたクリトリスへの刺激によって、痛みじゃない一点に誘導された。──快 感へと。
「ぼく、また……イっ…て……!」
「くっ……俺もだ」
「どこにでも出して、いいよ。明の、好きなところで。……中でも、いいから」
「中は、もしものことがあったら嫌だろ?」
こんなときになっても、明はぼくを気遣う。いつものように気にして欲しくないのに。ただ明を喜ばせたいだけなのに。
「あっ、はぁ、だめえ! もうイクよぉっ!!」
ぼくがイクと同時に明のが引き抜かれて、その先から大量の白濁の液体がぼくの顔にふりかかった。
「ふああああっ! これ……熱っ!」
顔と胸と腹とにかかったそれは火傷しそうなほどに熱かった。
そのうち、頬にかかったのが流れてきて、盛大に息を切らして半開きになった口の端から中に入った。
「…………変な味」
でも、明の味。ぼくで感じてイってくれた証。そう考えると嬉しくなる。

──嬉しい?

なんでだろう。なんで嬉しいんだろう。不意に意識が切り替わる。
どこかから湧いて出た嬉しいという感情。その出所を探るも、どこにも発見できなかった。
ただ、探してない場所がある。でもそこは探さなかった。そこは触れてはいけない気がした。
認めたくないものを認めてしまうことになるかもしれないから。


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